「原作者がガッツリ関わるアニメ映画」が続々誕生 クオリティが格段にあがる納得の理由
原作、脚本、監修、さらには監督まで、近年では「原作者がガッツリと関わったアニメ映画」が続々と生まれています。実際に本編を見れば、「だから、原作ファンも納得の、ここまでのクオリティになったのか!」と納得できる3作品+αを振り返りましょう。
原作者が作詞や声優も務めたことも

注目のアニメ映画が続々と公開される今、「原作者がガッツリと関わったアニメ映画」も生まれています。近年での3作品+αと、それらの作品が成功した理由に着目します。
●『THE FIRST SLAM DUNK』
言わずと知れたバスケットボールマンガの金字塔『SLAM DUNK』のアニメ映画で、原作者である井上雄彦さんが監督、脚本をも手がけた『THE FIRST SLAM DUNK』(2022年)は、映像面でのクオリティの追求が凄まじいことになっています。書籍「THE FIRST SLAM DUNK re:SOURCE」では、制作前にアイデアスケッチやスタッフに伝えるためのイラストを描き、注釈で細かい指示を入れ、キャラクターの眉や唇などにチェックと修正を繰り返しており、何ひとつとして妥協を許していないことが分かりました。
スタッフへのインタビューでは「(井上監督は)原作者として物語のビジョンがあり、それをちゃんと共有できる明瞭でやさしい言葉を持っている」などと語られており、理想的なスタッフと監督との連携ができたこともうかがわせます。出来上がった映像の「マンガそのままキャラクターが、本当のバスケの動きで、熱い試合を繰り広げている」興奮と驚きは、クリエイターの努力と執念の賜物です。
●『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』 (前章/後章)
東京上空に巨大な宇宙船が来襲した終末世界での女の子たちの日常を描く、2024年公開のアニメ映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』2部作(前章/後章)の原作者、浅野いにおさんは、脚本やキャスティング会議などに関わった他、完成披露試写会のあいさつでは「前章だけでも100から200カットはリテイクをお願いして作業をしていただいている」「直接レタッチしたり、場所によっては僕がゼロから描いたものもある」とも打ち明けていました。スタッフロールには、「原画」に浅野さんのクレジットがあります。ほとんど「総監督」のような仕事、と言ってもいいでしょう。
また、「後章」の挿入歌であるでんぱ組.inc「あした地球がこなごなになっても」の作詞を手がけたのも、浅野いにおさんです。こちらは2015年リリースの楽曲で、浅野いにおさんは「当時は『デデデデ』(原作マンガ)の世界観で頭がロックされていて、この曲をこの世界観で作ってみよう」と考えていたそうですが、当時はアニメの企画はなく「楽曲を使ってもらおうなんて思ってもいなかった」とのことでした。実際の劇中のシーンとの歌詞のシンクロには、鳥肌が総立ちになります。