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レビューサイトで「満点評価」が大量投下? 映画『プペル』が「先入観」なしに評価できない問題

公開された映画『プペル』新作は、「満点評価」の大量投下や過去の「商法」、クラウドファンディングなどへの批判も影響し、作品は内容以前に「先入観抜きで評価しにくい」状況になっています。

公開3日目で『国宝』より高い「スコア」を記録したが…?

『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』ポスターのイメージ(マグミクス編集部撮影)
『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』ポスターのイメージ(マグミクス編集部撮影)

 2026年3月27日から公開中の『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』(以下、約束の時計台)に対する、映画レビューサイトの評価が「不自然」に見えるようです。本来であれば、映画は「先入観」や「偏見」なしに作品として楽しんでよいものですが、同作についてはそれを難しくする問題が発生しています。映画ライターのヒナタカさんに解説してもらいます。

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 映画公開から3日目となる3月30日現在、『約束の時計台』は、大手レビューサイトでもある「映画.com」で5点満点中「4.6点」と、昨年夏頃から公開されロングランヒットとなっている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と『国宝』の「4.1点」をはるかに上回るハイスコアを記録しています。

 その「映画.com」の82%にもおよぶ満点評価レビューを投稿したユーザーを調べていくと、そのほとんどが『約束の時計台』にしか投稿していないことがわかりました。

 もうひとつの大手レビューサイト「Filmarks」でも、「『約束の時計台』以外には投稿のないユーザー」による満点評価が大量に投稿されていました。しかし、こちらは3月30日に発表された初日満足度ランキングでは「5位」、スコアは5点満点中「3.75点」にとどまっています。

 その理由は、Filmaksのスコアには「メンバー登録から一定期間Filmarksを利用しているユーザーから投稿されたものが対象」という規定があるからです。

 ふたつのレビューサイトで確認された「大量投稿」は、レビューサイト上での「工作」である可能性が濃厚で、「ファンが作品を広めるための運動」などと肯定することは難しいです。Filmarksの規定は、こうした「レビュー工作」にうまく対応していたと思いますが、忖度(そんたく)なしに作品を見たうえで高評価をつけている投稿があったとしても、それすら「工作だろう」と思われてしまいかねない状況です。

作品への「先入観」を拭いきれない? 「商法」への批判

 今回確認されたレビューサイトでの「工作」は2020年公開の前作『えんとつ町のプペル』でも見られ、さらに同作の脚本・原作・製作総指揮を務めた西野亮廣(あきひろ)さんによる「商法」にも批判があり、「先入観」なしに『約束の時計台』を評価しづらい状況を生んでいます。

 前作では、西野亮廣さんのオンラインサロンのメンバーが、「シナリオ台本&前売りチケットを3000円で購入し、他者にそれを上回る値段で売れば、そのぶんの利益を得られる」とnoteに投稿したことが話題になりました。

 続編の『約束の時計台』では、そこまで露骨な商法は話題になっていませんが、同作を支援するクラウドファンディングには、「リクープ」(売上の回収)の有無によって参加者への分配金の割合が大幅に変わる仕組みが明記されています。これ自体は、作品を多くの人に届けるための手法やビジネスモデルとして納得できるところもあります。

 しかし、クラウドファンディングの活用の仕方にも、支持者に依存したいわゆる「信者ビジネス」ではないかという批判があります。『えんとつ町のプペル』は、本編の内容以前に「西野亮廣さんの試み」「彼を支持する人たちの行動」の存在を「考えてしまう」構造がある。それが作品そのものを純粋に楽しみにくい理由にもなっていると考えます。

※以下から、『映画 えんとつ町のプペル ~約束の時計台~』の一部内容に触れています。

「作品内容」だけを対象に評価を試みたが…?

 それでは、「先入観」を無理矢理にでも排除して『約束の時計台』を鑑賞した場合、どのような評価になるでしょうか。

「いろいろな批判や懸念点は横において、作品そのものを楽しめれば良い」と思って鑑賞したところ、筆者個人としては前作と同様に「Not For Me」でした。

 前作では、全体的に「自己啓発本のように主張を押し付けられているような感覚」があり、SNS上でも同様の意見が複数ありました。『約束の時計台』でそうしたノイズになる要素が改善されていれば良いな……と希望を持っていたのですが、残念ながら本編の冒頭から「先入観なし」の評価が不可能だと思い知らされることになりました。

 何しろ、主人公・ルビッチがモノローグで話しているのが、2019年の近畿大学の卒業式で西野亮廣さんが話されていた「時計の長針と秒針」のスピーチほぼそのままなのです。個人的には、機械的に動いている時計の針が重なることを、人生が一定の間隔で報われるかのように例えることに無理があると思うのですが、これを本作はメインテーマに置いているのです。

 それでも、そのテーマが良い物語として昇華されていればまだ良かったのですが、前作に増して世界設定も物語運びにも納得しにくいところが多く、ご都合主義を感じてしまいました。

 STUDIO4°Cの素晴らしいアニメの技術を詰め込むことができるのですから、せめて優れた脚本家を雇うなりして、作品に込めたかった思想やテーマをうまく物語に落とし込んで、良い意味で観客を「騙す」ための工夫をしてほしいと感じました。このままでは、前述してきた「先入観」と切り離して作品を評価できませんし、サロンメンバー以外の人からの幅広い支持を集めるのは難しいでしょう。

(ヒナタカ)

【画像】「え」 これが新作『プペル』に出演した元「グラビアクイーン」の姿です(7枚)

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ヒナタカ

映画ライター。WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「女子SPA!」「NiEW(ニュー)」、紙媒体「月刊総務」などで記事を執筆中。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Xアカウント:https://x.com/HinatakaJeF

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