台湾人アーティストが描く「浮世絵風ガンダム」が圧巻 まさに“白い悪魔”な姿に「怖っ!」
台湾出身で中国の上海で活躍するアーティストの「李國弘(Bruce Lee)」さんが、自身のインスタグラムに投稿した、「ガンダム」シリーズのモビルスーツをテーマにした浮世絵が、圧巻の完成度です。
ガンダム好き台湾人アーティストによる水墨画

台湾出身で中国の上海で活躍するアーティストの「李國弘(Bruce Lee)」さんが、自身のインスタグラムに投稿した、『機動戦士ガンダム』のモビルスーツやモビルアーマーを浮世絵に描いた作品が、圧巻の完成度です。
ザクやビグ・ザム、ジオングなどのガンダムメカが「妖怪・付喪神」や「妖怪浮世絵」をモチーフに描かれており、近未来のSFデザインと江戸時代の日本で描かれたようなノスタルジックさが見事に融合しています。
作品を手がけた「李國弘(Bruce Lee)」さんに制作秘話を聞きました。
――これまでの経歴を教えて下さい。
私は以前、台湾で建築を学び、卒業後はプログラミングをしてインタラクティブな作品を制作していました。その後、広告代理店・オグルヴィ(Ogilvy)の広告部門でクリエイティブの仕事をし、2015年に上海の広告会社に移り、シニアクリエイティブディレクターとしてレゴを主なクライアントとして担当していました。
2021年末、私が敬愛する漫画家・三浦建太郎先生が亡くなり、大きな衝撃を受けました。それをきっかけに、仕事を辞めて、いままで挑戦したことのないことをやってみようと思いました。自分にどんな可能性があるのかを試したかったのです。
――すぐに水墨画を描かれるようになったのでしょうか?
2022年に退職した後、最初は Arduino (電子工作でよく使われるマイコンボード)で装置を作って遊んでいました。その後、テルミン(電子楽器)を自作し、演奏を学びながら、その過程を Bilibili動画で公開しました。途中でプログラミングに行き詰まったため、気分転換に模型制作を始めたところ、意外にも初めて粘土で作った作品が好評でした。
2023年、模型作品を一冊の本にまとめたところ、フォロワーから「同じシリーズの作品をもっと作ってほしい」という声を頂きました。しかし、私は同じことを繰り返すのが好きではなかったし、「そういえば、しばらく絵を描いていないな」と思い、新しい挑戦として、いままで描いたことのない水墨画に手を出しました。
そうして生まれたのが 「怪獣山水」 シリーズです。約1年かけて全作品を完成させ、1冊の本にまとめました。
紙がまだたくさん余っていたので、2024年はさらに水墨画で新シリーズを描き始めました。もともと模型を作っていた時に、生物的なデザインのモビルスーツを試作していましたが、どこか物足りなさを感じていました。
そんななか、2年前に『ゲゲゲの鬼太郎』の映画が公開され、それがヒントになりました。ちょうど友人が壁一面に並べるほど模型を収集しており、その影響も受けて「妖怪・付喪神」「妖怪浮世絵」の要素を取り入れた作品を制作することにしました。このシリーズは、時間がどんどん減っていく中年男性の淡い哀愁を表現する試みでもあります。
――『機動戦士ガンダム』はお好きなのでしょうか?
『機動戦士ガンダム』は大好きです。私の世代の少年たちは、ほとんどがその影響を受けています。精密なメカニック設定はもちろんですが、作品のなかで描かれる「異なる立場」の描写がとても深く、考えさせられます。リアルに近いフィクションを通じて、自分の生きる環境を見つめ直す機会を与えてくれる。それが、この作品の魅力だと思います。優れたアニメには、こうした力があります。
――実制作にあたって苦労したことは?
私は水墨画を始めたばかりなので、正直なところ、すべてが難しかったです。「怪獣山水」 シリーズでは、宋代の絵画を研究し、それを現代のテーマでどう表現できるか試しました。
次の 「機動戦士妖怪」 シリーズでは、浮世絵の妖怪表現を研究し、それまでの中国山水画の知識と融合させる形で描きました。制作を進めるうちに、中国水墨画や浮世絵の面白さを徐々に理解し、まるでゲームのステージをクリアしていくような感覚を覚えました。
――特にお気に入りの作品はなんでしょうか? 今後の展望もお聞かせ下さい。
「Gファイター」 の作品は特に気に入っていて、最終的に画集の表紙にも採用しました。妖怪の雰囲気や奇妙な生き物の表現がうまくできたと思っています。
今後の展望については、正直なところ、まだ分かりません。なにしろ、個人創作を始めてまだたったの3年ですから。ただ、できれば自分の作品を発表したり、展覧会を開いたり、テルミンの演奏を披露できる機会があればと思っています。
現在は、広告業界で働いていた頃の貯金で生活していますが、今後は創作活動だけで十分な収入を得られるようになりたいですね。
(乃木章)