ぱっと見では「どうかしてた」アニメ映画 なぜ?と思ったけど「面白いんかい」
発想やアイデアそのものに驚ける、「まさかの映画化」のアニメ映画を3作品紹介しましょう。「お菓子を映画化」「ギャグマンガと名作アニメのコラボ」「アメコミヒーローがヤクザになる」という、それぞれとんでもないものでした。
「ほぼイチから作り上げた」作品も

原作にあたる作品の人気や「映画にしやすい」特徴から「納得のアプローチ」がされた映画化作品はたくさんありますが、一方でぱっと見ではなぜ企画が成立したのか分からない映画もいくつかあります。今回は、「この原作をこう映画化するのか!」という発想に驚き、かつアイデアを称賛できる出来となった、アニメ映画3作品を振り返りましょう。
●『映画 たべっ子どうぶつ』(2025年5月1日より劇場公開中)
ギンビス社の「たべっ子どうぶつ」はグッズ展開、コラボ企画の実施、パズルゲーム化もされる人気お菓子ですが、さすがに今回のアニメ映画化に驚いた方は多いのではないでしょうか(公式のキャッチコピーにも「まさかの映画化!」とあります)。何しろ原作には「物語がない」ですし、3DCGやキャラクターの詳細も含めて「ほぼイチから作り上げた」映画なのです。
その内容は、「凶悪な『わたあめ軍団』から、さらわれた仲間の『ぺがさすちゃん』と世界を救うべく、戦闘力ゼロのたべっ子どうぶつたちが奮闘する」という分かりやすい冒険ものです。見知った街から人の気配がなくなり、わたあめ軍団に襲われる冒頭から「ちょっと怖い」印象がありますし、子供向けにしてはなかなかハードでダークな「負の感情を描く」物語にもなっていました。
アニメ映画化のきっかけとなったのは、プロデューサーの須藤孝太郎さんが「たべっ子どうぶつ」のキャラクターのステッカーが貼られたギンビス社の営業車を見かけて、「アニメにしたら面白いんじゃないかな。それも 3DCGで。日本でも『トイ・ストーリー』を作れるはず」と閃いたところからでした。それでも脚本開発には相当の苦労があり、ヨーロッパでほのぼのと旅をするものから、近未来SFなどの案などもあったそうです。
そして、脚本開発チームが最初から「あくまでどうぶつたちが『お菓子』であること」と決めたほか、監督監督の竹清仁さんも「どうぶつキャラのストーリーでは、たべっ子どうぶつの意味がない」と考えたという通りの内容に仕上がっていました。
「人間が『いただきます』というとたべっ子どうぶつたちがお菓子に戻るも、お菓子を食べたら再びたべっ子どうぶつが現れる」設定やそれを活かしたアイデア、「お菓子を通じて世界平和を訴える」メッセージ性にも、驚きと感動があります。
前述の適度な怖さも必要かつ誠実な描写ですし、全体的にはかわいくて楽しい場面が多いので、子供から大人まで楽しめるエンタメ作品として推薦します。
●『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』(2015年)
『天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~』は、赤塚不二夫さん原作の『天才バカボン』を原作としつつ、日本アニメーション制作のTVアニメ『フランダースの犬』とのコラボを果たしたフラッシュアニメ作品です。その『フランダースの犬』サイドの物語は、「ラストで天に召されたはずの『ネロ』と『パトラッシュ』が、自分たちを虐げてきた人間たちへ復讐するため、悪の手先となって現代によみがえる」という、とんでもないものでした。
方や『天才バカボン』サイドの物語で焦点が当てられているのは、「『バカボンのパパ』の本名を探る」という部分です。さらに、なぜかバカボンのパパは「太陽を西からのぼらせる」ムチャクチャにもほどがある挑戦をしていました。
それと並行して彼の本名を探る悪の組織の策略と、小学校に転校してきたネロと「バカボン」たちの交流も描かれています。ネロが次第に打ち解けていく様子や、それでも彼が再び「闇堕ち」しそうになってしまう悲哀、そのときのバカボンの言葉などが、意外な感動を呼ぶようにもなっています。
この意外すぎる企画は、監督のFROGMANさんが子供のときに『フランダースの犬』のアニメのラストシーンを観て抱いた、ひどい目にあったのにどうして笑いながら天国に向かうのか、という疑問が発端でした。当時のインタビューでは、怒られるかと思いきや、好意的な反応が出てうれしかったということも語っています。実際に本編を見ても、ただ『フランダースの犬』をネタにしているだけではなく、ネロの気持ちに寄り添う優しさを感じる内容でした。
クライマックスでは、さすがに「バカだから」で安易に解決しすぎでは? と思ったことも事実ですが、はちゃめちゃな展開やメタフィクション的なギャグが好きな方、FROGMANさんの「秘密結社 鷹の爪」シリーズのファンという人は、大いに楽しめるでしょう。バカボンのパパ役のFROGMANさんのほか、ネロ役の瀧本美織さん、バカボン役の犬山イヌコさんの好演も美点です。
●『ニンジャバットマンVSヤクザリーグ』(2025年3月21日より各種プラットフォームで配信中)
本作は、2018年に劇場公開された『ニンジャバットマン』の続編です。大きな見どころは「DCコミック」のヒーローたちに「日本風」のアレンジがされていることです、「アクアマン」「ワンダーウーマン」といったおなじみのキャラの日本ならではの姿(さらに日本風の名前もついています)は、岡崎能士さんのキャラクターデザインの秀逸さやダイナミックなアクション描写も相まって、とてつもなくかっこよく見えることでしょう。
脚本を手がけたのは、アニメ『天元突破グレンラガン』でもお馴染みの中島かずきさんで、持ち味の「ぶっ飛んでいる」発想や、「勢いで持っていく」力強さは本作でも健在です。初っ端から「ヤクザ豪雨」が降ってくるというとんでもなさに笑い、アニメ映画『プロメア』にもあったケレン味といい意味でのバカバカしさが同居した、「必殺技叫び」にも熱い気持ちにさせられます。
それでいて、ヤクザがヤクザを支配する仁義なき世界での群像劇は手が混んでいます。正義のチームであるはずだったDCヒーローたちの「ジャスティス・リーグ」が、「ヤクザリーグ」という悪の存在になった理由や、そのリーダーである「スーパーマン」の危険な思想など、意外にも世界の分断という現代的なテーマを扱っていますし、「任侠」を重んじる精神性にも志の高さを感じました。
前作から「バットマン」役の山寺宏一さんや、「ロビン」役の梶裕貴さんが続投したほか、新たに参加したアクアマン役の大塚明夫さんやワンダーウーマン役の朴ろ美さんも最高にハマっています。物語はほぼ独立しているものの、前作『ニンジャバットマン』の直後から始まるので、なるべくそちらを見ておくのがおすすめです。
※朴ろ美さんの「ろ」は王へんに路の字が正式表記
(ヒナタカ)

