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『ファイナルファンタジーXII』発売から15年。賛否を招いた群像劇と戦闘システム

従来シリーズと一線を画した「ガンビット」システム

『FFXII』をベースに、ゲームデザインを再構築しHDリマスターされた『ファイナルファンタジーXIIザ ゾディアック エイジ』。画像は2019年に発売されたニンテンドーSwitch版
『FFXII』をベースに、ゲームデザインを再構築しHDリマスターされた『ファイナルファンタジーXIIザ ゾディアック エイジ』。画像は2019年に発売されたニンテンドーSwitch版

 そして何より驚かされたのは、「アクティブ・ディメンション・バトル」(以下、ADB)と呼ばれる戦闘システムです。こちらはフィールドの移動中に敵と遭遇する「ランダムエンカウント」や、何らかのシンボルと接触して戦闘へ突入する「シンボルエンカウント」とは違い、フィールド上の敵へ近づくとその場でバトルがスタートします。

 ロード画面を挟まず、移動状態からそのまま武器を構えてモンスターとの戦闘が始まるのです。見た目は『FFXI』の戦闘システムをベースとしていますが、それでも過去シリーズから通して見れば革新的な変化であるのは間違いないでしょう。

 そうした戦闘システムに加えて、より深みを持たせた要素が「ガンビット」です。これは戦闘中にパーティーキャラクターを自動化させる一種のコマンドで、発動条件と行動を指定することで、プレイヤーが操作せずともキャラクターが決まったアクションを起こすようになります。

 例えば、「HP50%以下で対象キャラにケアルガ」、「状態異常をわずらった対象キャラにエスナ」……などなど、コマンドを上手く組み合わせることができれば一通りの戦闘パターンを自動化できるという優れもの。しっかりと組み上げたガンビットなら、5000万あまりの体力を誇る最強モンスター「ヤズマット」を、ただ眺めるだけで(キャラクターは自動的に戦闘を行う)倒すことも可能です。

 しかし、ガンビットの扱い方はプログラミングに近く、テクニックをマスターする過程で高いハードルがあったのも事実です。加えて、キャラクター育成の要となる「ライセンス」も同様に情報が細かく、本作の全要素を理解して攻略に生かそうとするならば、プレイヤー自身の頭をフル回転させる必要がありました。

 誤解を恐れずに申し上げるなら、『FFXII』は手にとったユーザーそれぞれで評価の分かれる作品だと感じます。どうしても影が薄くなってしまう主人公、愛憎まみれる政治闘争、初見では奥深さに気づきにくい戦闘システムの数々……。決して万人ウケする作品ではありませんが、一方で従来シリーズと一線を画す魅力に心惹かれたユーザーも大勢いることでしょう。

 そんな本稿の最後は、作中のNPCが発した何気なくも味わい深いセリフで締めさせていただきます。

 「確かに自由かもしれない。けれどそれは全ての責任を自分で負って初めて得られるものなんだ」

(龍田優貴)

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