『ファイナルファンタジーXII』発売から15年。賛否を招いた群像劇と戦闘システム
15年前の3月16日にプレイステーション2向けに発売された「ファイナルファンタジー」12作目は、画期的な戦闘システムと奥深い群像劇で、当時としては新鮮な魅力を放っていましたが、プレイヤーによってその受け取り方は異なっていたようです。
PS2最後の「FF」ナンバリング作品

2021年2下旬、スクウェア・エニックスより『ファイナルファンタジーVII』のスマートフォン向けアプリ(計2本)が発表されました。そのうちの1本は、プレイヤー同士で実力を競い合うバトルロワイヤルゲーム。この「ファイナルファンタジー」(以下、FF)シリーズ初となる”バトロワゲー”に対し、ユーザーからは期待や疑問の入り交ざったさまざまな声が上がっています。
そして、15年前の今日、2006年3月16日に発売された1本の「FF」シリーズ作品が大きな賛否両論の渦を巻き起こしていました。それが、『ファイナルファンタジーXII』(以下、FFXII)です。
『FFXII』は、プレイステーション(PS)2向けに発売された、最後の「FF」ナンバリングタイトルです。同じくPS2向けの前作『ファイナルファンタジーXI』の誕生(正式サービス開始)が2002年5月16日で、『FFXII』は約4年越しの新作ナンバリングタイトルとして送り出されたのです。
実際のところ、本作の開発プロジェクト自体は2001年ごろから始動していましが、メインスタッフの脱退やシナリオ案の練り直しなどが重なり、数回の発売延期の末にようやく日の目を浴びることになったのです。
本作の主人公は”空賊”に憧れる17歳の少年「ヴァン」です。プレイヤーは彼を操作し、「イヴァリース」を舞台とした大国間の政治および武力闘争に巻き込まれながらも、世界を揺るがすキーアイテム「破魔石」を奪取することになります。
物語で特徴的なのが、”主役(ヴァン)の成長だけを描いているわけではない”という点で、数々の登場人物に着目した群像劇が展開します。ストーリーを進める過程で主要キャラクターたちの葛藤や心境のゆれ動く様子が幾度となく映し出されます。
ゆえに、パーティーメンバーの面々も個性豊かです。祖国解放と己の復讐のために生きるダルマスカ王女「アーシェ」、帝国の名家出身でありながら空賊として名を馳せる「バルフレア」、ヴァンの兄を殺害した汚名(実際は無実)を着せられながらも結果的に仲間入りを果たしたダルマスカ王国の元将軍「バッシュ」など、出自はもちろん抱えている信条も異なる人物たちがパーティーメンバーとして戦いに参加します。
群像劇が主体のストーリー展開は過去の「FF」シリーズでも見られましたが、『FFXII』においては、主人公のヴァン以上にスポットライトを浴びる一部キャラクター(アーシェ、バルフレアなど)が特筆すべきポイントかもしれません。
”個人間の問題がそのまま世界存亡の命運に直結する”というより、緻密に作り込まれたイヴァリースという舞台の上で、主人公たちが何のために御旗を掲げ、各々が身を置く社会でどのように立ち回るのか……従来の「FF」シリーズと毛色が異なる描写が一因となったのか、『FFXII』は発売当時から評価の分かれる作品であったと筆者は記憶しています。