【追悼】美形キャラを演じた塩沢兼人 唯一無二の声に「代役を立てない」例も
死したのちも声を残した作品もあった

こういった幅の広い演技力を見せた塩沢さんですが、やはり代表的なキャラは二枚目、クール、美形キャラといった方向性だったと思います。その艶のある美声は、塩沢さんの真骨頂ともいえる完成度の高さでした。そのなかでも、さまざまなパターンのキャラを演じています。
何でもお見通しという雰囲気のあるクールビューティーなキャラといえば、『聖闘士星矢』(1986~1989年)の牡羊座のムウ、『銀河英雄伝説』(1988~2000年)のパウル・フォン・オーベルシュタイン、『アルスラーン戦記』(1991年)のナルサス、『アンジェリーク』(1994年)の闇の守護聖クラヴィス、『LEGEND OF BASARA』(1998年)の揚羽などが思い浮かぶでしょう。
儚い雰囲気を持った美形キャラは『戦闘メカ ザブングル』(1982年)のアーサー・ランク、『ふしぎの海のナディア』(1990年)のネオ皇帝の声が脳内に聞こえてきます。
クールに見えて熱い心を秘めているキャラというのも得意分野で、『ふたり鷹』(1984年)の東条鷹、『北斗の拳』(1984~1987年)のレイ、『超獣機神ダンクーガ』(1985年)の司馬亮、『エリア88』(1985年)の風間真などが思い浮かびませんか?
そして、はまり役が多かったのは悪役で、『未来警察ウラシマン』(1983年)のアドルフ・フォン・ルードヴィッヒ、『夢戦士ウイングマン』(1984年)のシャフト(黒津)、『蒼き流星SPTレイズナー』(1985年)のル・カイン、『美少女戦士セーラームーンR』(1993年)のプリンス・デマンド、『デジモンアドベンチャー』(1999年)のデビモンといった面々が思い出深いところです。
46歳でのあまりにも早い突然死は関係者やファンに大きな衝撃を与え、その死を惜しむ声は多く寄せられました。唯一無二とも思えるその声質により、塩沢さんの演じていたキャラに代役を立てることをしなかった作品もいくつかあります。
前述した『クレヨンしんちゃん』のぶりぶりざえもんは主要キャラだったにも関わらず、塩沢さんの没後、16年にわたって声のある形で登場しなかった時期がありました。
ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズでは、現在も塩沢さんが生前に録音した声を使用しています。特に『超獣機神ダンクーガ』の司馬亮は、塩沢さんの声に他の声優が合わせる形でパターンを変えるという手法で徹底していました。
この他にもゲーム『テイルズ オブ エターニア』(2000年)では、塩沢さんへの追悼のため、『テイルズ オブ ファンタジア』(1995年)のダオスに酷似したゼクンドゥスを登場させ、ボイスは以前にダオスで録音したものを流用したそうです。
亡くなって22年の時が経ちますが、その偉業は語り継がれ、今なお現役のような扱いで聴くこともある塩沢さんの声。その声をリアルタイムで聴いてきた筆者たち世代は、この偉業を終生語り継いでいきたいと思います。
(加々美利治)




