内山昂輝がコロナ禍の現場で考えること「どんな状況下でもメリットに目を向けたい」
「少人数収録」だからこそできる作品づくりがある

「前世の記憶をなげうってでも強力なスキルを手にしたい」というケルヴィンは、出会う相手が強いほど興奮する戦闘狂。戦闘が始まると豹変する様子がケルヴィンというキャラクターのフックになるだろうと内山さんは考え、丁寧に演じるよう意識していたといいます。

「他者と適度にコミュニケーションをとる普段のケルヴィンと、バトルが始まって強い敵が出てきたときにワクワクしているケルヴィンのギャップは、完成途中の映像でも印象的に描かれていました。アフレコの際は、戦闘が始まると笑みがこぼれてしまうようなケルヴィンのクレイジーな側面を『派手な表現で積極的に演じてほしい』と言われていたので、思いきった表現も投入して演じました」
『黒の召喚士』では、同じシーンで会話するキャラクターについて、できるだけ一緒の時間にアフレコができるよう、現場が調整していたそうですが、それでもコロナ以前のように大人数でのアフレコが不可能となっている現在。相手と直接芝居を掛け合えない、新人声優が先輩の芝居を学ぶ機会が減ったというようなデメリットばかりが浮き彫りにされがちですが、内山さんは「どんな状況下でもメリットに目を向けたい」と語ります。
「以前は大勢で録っていたので、どうしてもメインキャラクターがからむ部分に全体のリソースを集中せざるを得なかったんです。その点、今は少人数で分けて収録するため、その話数のメインではないキャラクターのディテールも詰めやすい状況がある気がする。やり方は人それぞれだろうけど、『このセリフはこういう言い方でいいですか? ここの設定はどうなっていますか?』といったように、制作サイドとコミュニケーションをとるタイミングが増えて、僕はやりやすくなったと感じています。今後この状況が緩和されて以前のスタイルに近づいていったとしても、今のやり方の良い部分はしっかりと残すべきだと思います」

この言葉からもわかるように、これまでも内山さんは声優の立場からアニメ業界を俯瞰し、自分なりの考えを示してきました。数年前にインタビューした際には、「声優は『作る側』ではあるけれど『製作する側』ではないため、自分ではどうすることもできずに、業界の流れや資本に動かされる側面がある」(『声優男子。』2019 Winterより)と話していた内山さん。そんな彼が感じている、現在の業界の流れとは?
「ここ数年で言うと、やはり『鬼滅の刃』の功績が大きかったのではないでしょうか。ゴールデンタイムなどに放送されていたわけではないTVアニメ作品の、なおかつ続編が劇場版として公開され、日本映画の興行収入を塗り替えるほどの人気になったこと……業界の片隅にいる者として感じる空気感ではありますけど、『魅力的な原作があって、それを真摯に映像化したら、これほど多くの人に劇場で観てもらえて注目されるんだ』という成功例ができたことで、業界全体の仕事への考え方に良い影響を与えた気がします。その流れに『呪術廻戦』も見事に続いて、ますますマンガやアニメに新たに興味を持ってくれる人が増えたと思うので、とてもポジティブな流れだととらえています」

『鬼滅の刃』にも『呪術廻戦』にも出演しているという意味ではまさに流れの渦中にいる内山さんですが、声優として望むのは「自分が視聴者として楽しめるような『面白い』作品に、キャストとして関わっていたい」というシンプルな思いだけとのこと。
「なにが『面白い』かというのは……基本的にアニメの場合、ストーリーが大事なのはもちろんですが、映像の力が観客の心を動かすと僕は思っているんです。作画やキャラクターデザイン、その他のさまざまな作業を含めて、土台となる画が強いものでないと、声優がいくら頑張って熱演したところで限界があるというのが僕の経験則なので……。ですから、面白い原作、あるいは優れた脚本家が書くオリジナルアニメのシナリオと、魅力的な映像を作り出す会社が組み合わさったら、『素晴らしい土台ができたな』と感じてのびのびと演じることができる。そういった作品との出会いが続くかどうかは、僕自身ではどうしようもないところではあるし、実際のアフレコ中はそんなことは頭になくて、ただセリフをどうするか考えてるだけなんですけど。これからも幸福な出会いを信じて、ひとつひとつの作品にしっかりと向き合おうと思っています」
(とみたまい)






