絵巻物にコマ割りや吹き出しが?「マンガ風」翻訳の新たな可能性
日文研が絵巻物をマンガ風に再翻訳し、電子マンガとしてKADOKAWA「Comic Walker」より無料配信される試みが行われています。古典をマンガ化するのではなく、絵巻物をマンガ風に翻訳する試みは伝達手段としてのマンガの有用性を再認識させています。
現代人に新しい読み方を示す”マンガ”絵巻物
日本の文化、歴史を研究する大学共同利用機関、国際日本文化研究センター(通称:日文研)は、所蔵する絵巻物を翻訳し、電子マンガとしてKADOKAWAの無料漫画総合サイト「Comic Walker」より配信する新しい試みが行われています。
2019年4月現在、電子マンガとして公開されている作品は、原本が全3巻からなる『酒天童子繪巻(しゅてんどうじえまき)』と、室町時代の絵巻物『道成寺縁起(どうじょうじえんぎ)』の2作品です。前者は源頼光の鬼退治の活躍を描き、後者は日高川の大蛇伝説を描いた物語です。
絵巻物をコミカライズする試みの、どこに新しい点がみられるのでしょうか。今までにも『源氏物語』をマンガにした『あさきゆめみし』(大和和紀)や、リイド社が手がける『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』(ドリヤス工場)など、古典作品をマンガにする試みは今までにも数多く見られました。
今回の試みが画期的である点は、上にあげた作品のように「古典物語」を”マンガとして新たに書き直す”ことではなく、絵巻物の絵はそのままに活かした上で「コマ割り」や「カット割り」に工夫を凝らしている点です。さらに、吹き出しやナレーションを現代の日本語に翻訳したものを挿し込むことで、あくまで絵巻物を”マンガ風に再翻訳”した点にあるのです。
このことに関しては『まんが訳 酒天童子繪巻』の冒頭で日文研の大塚英志教授が「今回のコミカライズは絵巻物自体に”新しい読み方”を提示することを目的としている」とも語っています。