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主人公以外全滅! 女も子どもも皆殺し! 驚愕の少女向けアニメ『巴里のイザベル』とは

爆殺! 銃殺! 刺殺! 女も子どもも皆殺し!

 海外で発売されていた『巴里のイザベル』主題歌のレコード
海外で発売されていた『巴里のイザベル』主題歌のレコード

 最終回(第13話)は、ビクトル・ユゴーによる銃殺刑を恐れない少年の勇気を讃える詩の朗読で始まります。しかし、現実は悲惨なものでした。砲撃による爆殺、一斉射撃による銃殺、剣による刺殺など、あらゆる方法でパリ市民が虐殺されていきます。

 姉の恋人ジュールは銃殺刑に処されます。姉のジュネビエーブらがいる野戦病院にも軍が押し寄せてきました。気丈な姉はピストルを持って立ち向かいますが、ノータイムで撃たれてしまいます。気のいい小間使いの女性や仲間たちも皆殺し。屋敷は砲撃され、燃え盛る天井が落ちてきて姉は焼け死にました。身ごもっていた新しい生命も儚く消えてしまいます。

 兄のアンドレイアが単身ティエールに迫りますが、もう一歩のところで蜂の巣に。イザベルに「僕は生きるんだ!」と語っていた陽気なジャンも、不意打ちの一斉射撃で死亡。軍の指揮官の情けで生き残ったイザベルの脳裏には、親しい人たちの死に様が次々と浮かんできます。燃え盛るパリを見下ろすイザベルは、たったひとりで生きていくことを決意するのでした。おわり。

 史実だから仕方のないこととはいえ、ファミリー向け、少女向けのアニメとしてはあまりにも救いのない悲惨な終わり方です。この作品にはヒーローもヒロインもいません。主人公は多少活躍しますが、結果的に主人公以外の登場人物は全員死亡し、彼らを殺した政治家はそのまま生き残ります(ティエールはパリ・コミューンの鎮圧後、フランスの大統領に就任しました)。徹底的に革命の敗北を描いたドラマと言えるしょう。

 全13話の脚本を執筆したのは『魔法のプリンセス ミンキーモモ』や『ポケットモンスター』で知られる首藤剛志さん。当時、フランス革命を題材にした『ベルサイユのばら』(マンガと舞台)がヒットしていたことを受けて少女向けアニメの企画が立ち上がり、首藤さんがパリ・コミューンを題材に選んで企画書を書き上げました。後に首藤さんは「誰かの原作でない、僕のオリジナル作品としての過剰な愛着をゆるしてください」と記しています(WEBアニメスタイル 05年7月20日)。

 首藤さんは20代の頃、パリ・コミューンの最後の戦闘が行われたペール・ラシェーズ墓地(最終回でイザベルたちがいた墓地)に何度も通っていたそうなので、やはりパリ・コミューンそのものに思い入れがあったのでしょう。『巴里のイザベル』の続編を大人向けの小説として、パリ・コミューンからロシア革命までを1人の女性を通して描く構想もあったそうです(同上 10年3月24日)。

 なお、イザベルを演じた小山まみ(茉美)さんは、テープを聞いた首藤さんが周囲を説得して起用したそうです。後に首藤さんが脚本を担当した『戦国魔神ゴーショーグン』のレミー島田や『ミンキーモモ』のモモも小山さんが演じました。

 本作でテーマソングとして使用されていたのがショパンの「幻想即興曲」です。『巴里のイザベル』のストーリーと同様、予測不能な展開をみせるドラマティックな曲として知られています。この曲が発表されたのは1855年。つまり、パリ・コミューンとほぼ同時代です。2か月だけ成立した民衆による自治政府パリ・コミューンは、儚い「幻想」だったのかもしれません。

(大山くまお)

【画像】そうだったのか! 『巴里のイザベル』脚本家が手掛けた傑作アニメたち(5枚)

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