『閃光のハサウェイ』富野監督が言及したギギ・アンダルシアのモデル 「魔性の女」の真相が明らかに?
『閃光のハサウェイ』のヒロイン、ギギ・アンダルシアには「元ネタ」とも言えるモデルがいました。富野由悠季監督が言及したモデル人物とは誰だったのでしょうか?
「クェス」の要素も感じられるヒロイン

劇場公開中の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』のヒロイン「ギギ・アンダルシア」は、主人公「ハサウェイ・ノア」の心や運命を揺さぶり、翻弄する存在として描かれています。実は彼女には元ネタがありました。
ギギとハサウェイの初恋の女性「クェス・パラヤ」は、見た目はそれほど似ていませんが、内面には共通点が多々あります。たとえば、ふたりは優れた直感力、芯の強さ、奔放な言動などがよく似ています。ハサウェイがギギとクェスを重ねて見ている部分もあるようで、前作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』では、ギギの「やっちゃいなよ!」というセリフがハサウェイにはクェスの声と重なって聞こえるという演出がされていました。
ハサウェイにとって、ギギはクェスの身代わりなのかもしれません。ギギというキャラクターの元にクェスという存在があるのは間違いないでしょう。
「キルケーの魔女」というサブタイトルも、ギギを意識してつけられたものです。キルケーとはギリシア神話の「オデュッセイア」などに登場する魔女の名前です。強い力を持ち、魔法の力で人を動物に変えて従順にしてしまいます。
しかし、ただ他人を滅ぼす危険な存在というだけではありません。英雄オデュッセウスにはキルケーの魔法が効かず、逆にキルケーは彼のことが気に入って1年もの間ともに過ごし、旅立つときはさまざまな助言を与えていました。神話上のキルケーも、ギギの元ネタの一部でしょう。
富野監督が証言した「ギギ」のモデルとは?
当時の担当編集者だった井上伸一郎氏によると、富野由悠季監督は『閃光のハサウェイ』の小説を執筆したとき、ギギについて明確なイメージソースがあったといいます。
それは「ベル・エポック(美しい時代)」と呼ばれた時代のパリのミューズ、「アリス・プラン」という女性です。官能的な魅力にあふれ、歌手、モデル、女優として活躍した彼女の存在に、藤田嗣治をはじめとする多くの芸術家が刺激を受けており、優れた作品がいくつも生み出されました。何人かの芸術家とは激しい恋もしています。
彼女の異名は「モンパルナスのキキ」です。富野監督は彼女のイメージをもとにギギを作っていきました。ギギは男性を誘惑して滅ぼしてしまう「魔性の女」や「運命の女」ではなく、モンパルナスのキキのように男たちを触発する存在だということなのでしょう。
ところで、ギギにはもうひとつ、元ネタがあると言われています。第二次世界大戦中、ヨーロッパ戦線に駐留していたアメリカ軍のある兵士が人形を拾って持ち歩いたところ、彼の部隊が連戦連勝するようになり、噂を聞きつけた友軍の兵士が人形を盗むと、ツキがその部隊に移ったのだそうです。
その後、アメリカ軍同士で人形をめぐって小競り合いまで起こるようになりました。この人形の名前が「ギギ」だったというのです。
このエピソードは雑誌「ニュータイプ」1989年10月号の『閃光のハサウェイ』特集に記されています。しかし、さまざまな資料を調べても、史実にはこのような「ギギ伝説」は確認できません。どうやら雑誌の創作だったと推測されます。もし「ギギ伝説」のソースをご存知の方がいたら、お知らせください。
(大山くまお)


