『風、薫る』主人公2人のモチーフは日本の看護師の草分け、”ナイチンゲール” ナースの地位向上に貢献した生涯
連続テレビ小説『風、薫る』の放送がスタートしました。主人公ふたりのモデルになったのは、何をした人物なのでしょうか。
日本の看護を確立した「日本のナイチンゲール」たち

2026年3月30日(月)に、NHK連続テレビ小説『風、薫る』の放送がスタートしました。見上愛さんと上坂樹里さんがダブルヒロインを務め、明治時代を舞台にふたりの女性が日本初の「看護師」としてたくましく生きていく姿を描きます。
本作は史実をベースにした、オリジナル作品です。見上さんが演じる「一ノ瀬りん」は大関和(ちか)さんという女性、上坂さんが演じる「大家直美」は鈴木雅(まさ)さんという女性をモチーフにしています。このふたりは、どのようなことをした人物なのでしょうか。
前作『ばけばけ』の主人公「松野トキ(演:高石あかり)」の10歳年上で、同じ1858年生まれの大関さんと鈴木さんは、日本で最も早い時期に正規の訓練を受けた職業看護師(トレインド・ナース)として活躍しました。ふたりは同い年なだけでなく、武家出身、英語が堪能、夫がいないシングルマザー(大関さんは離婚、鈴木さんは死別)であることも共通しています。なお、大家直美は「生後まもなく親に捨てられ、キリスト教の牧師に育てられた(公式サイト引用)」という、鈴木さんとはまったく異なる生い立ちの女性として描かれるようです。
明治時代の前半頃、「看病婦」と呼ばれるけが人や病人の世話をする仕事は卑しい職業とされ、偏見も強く、なり手はほとんどいませんでした。そんななか、ふたりは1887年1月に桜井女学校附属看護学校の1回生として、近代的な看護学を学びます。1回生は全部で6人でした。
「白衣の天使」という言葉の由来でもあるフローレンス・ナイチンゲールは、劣悪な医療環境にあった19世紀の英国で医療衛生改革を行った人物です。英国ではナイチンゲール看護学校が設立され、「ナイチンゲール方式」と呼ばれる看護師の教育システムが確立されました。ナイチンゲール方式は日本にも輸入され、そのなかで大関さんと鈴木さんは学んでいます。
看護学校を卒業したふたりは、帝国大学医科大学附属第一病院(現在の東京大学医学部附属病院)の看護婦として働きます。その後、大関さんは新潟に移り、病院で看護婦長を務めながらトレインド・ナースの養成を行いました。当時多くの人の命を奪っていた赤痢などの感染病対策にも尽力し、大きな成果をあげています。
鈴木さんは日本初の派出看護婦会である、「慈善看護婦会」を設立しました。派出看護婦たちの労働環境を整えるとともに、貧困の人には無料で看護婦を派遣して、看護婦の存在を多くの人たちに認知してもらう活動を行っています。
東京に戻った大関さんは鈴木さんを支え、ふたりで看護婦に一定の教育を課す制度や資格の整備を行い、看護婦の地位向上に取り組みました。大関さんは当時の日本において、画期的な看護の実用書も執筆しています。
黎明期だった看護界をリードしたふたりは、看護師という仕事の重要性を日本に広めるため尽力し続けたのです。
『風、薫る』は朝ドラではこれまでなかった、女性の“バディ”ものとしても注目を集めています。明治の時代にシングルマザーと職業看護婦というとてつもなく生きづらい境遇を抱えながら、自分の力で時代を切り開き、世の中のために働いた女性たちがどのように描かれるのか、楽しみにしたいと思います。
(大山くまお)
