みんな驚く「犯人像」どう生まれた? リブート版『新幹線大爆破』変わった結果どうなったのか
50年ぶりに再起動したリブート版『新幹線大爆破』は、オリジナル版とどう違うのか? ネタバレなしで、そしてどのような点が一番変わったのか解説します。
半世紀ぶりにパニック映画の金字塔が蘇る!

1975年に公開されたパニック映画の金字塔が50年ぶりに再起動した、樋口真嗣監督、草彅剛さん主演の映画『新幹線大爆破』が、2025年4月23日(水)よりNetflixで配信されています。
今回の映画は国鉄の協力を得られなかったオリジナル版に対し、JR東日本の特別協力を受けていること、またオリジナル版の出来事が作中で50年前に実際に起きた事件として扱われているなど、さまざまな点が話題になっています。
まだ観ていない人が気になる部分としては、オリジナル版とリブート版ではどのような違いがあるのか、という点ではないでしょうか。大きなネタバレはなしで、改変ポイントをいくつか振り返ります。
●改変ポイント1:東京発から東京行きへ
オリジナル版では、東京発博多行きの新幹線ひかり109号に爆弾が仕掛けられていましたが、今回のリブート版は新青森発東京行きのはやぶさ60号が舞台になっています。東京から出発する設定から、東京に向かう設定に変更されているのです。
日本の中枢である東京で、もし未曾有の事態が起きたら? という発想は、同じ樋口真嗣監督の『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』につながるものと言えるでしょう。そのために、オリジナルよりも「非情な決断」を迫られる展開も生まれ、切迫感も出ています。
●改変ポイント2:時速も身代金もアップ
オリジナル版では、時速80km以下で爆弾が爆発する仕組みでしたが、リブート版では時速100kmと20km分アップし、身代金の額も、500万ドル(およそ15億円)から1000億円に大幅に値上げされています。
中盤の細かい速度設定を生かした大スペクタクルシーンもあるほか、1000億円という即用意できるわけがない額を工面するために、今回は「乗客」が話に大きくかかわってきます。その際に50年前には存在しない機能が使われるのも面白い点ですし、この破格の大金を用意できるのかどうか、という部分が終盤のグっとくるポイントにもなっています。
●改変ポイント3:運転士視点プラス車掌視点
オリジナル版では、犯人の「沖田(演:高倉健)」、運転士の「青木(演:千葉真一)」、運転指令長の「青木(演:宇津井健)」の3人が主要キャストでした。新幹線パートは、主に青木の視点で描かれています。
一方リブート版では、車掌の「高市(演:草彅剛)」がメインキャストを務めています。彼が救出作戦で大きな役割を果たしたり、パニックに陥った乗客たちのケアをしたりと「車掌視点」がプラスされることで、物語はより重層的に紡がれていきます。
「キネマ旬報」2025年5月号(キネマ旬報社)の樋口監督のインタビューによると、今回の映画に協力しているJR東日本から、こういった事件がもし起きた場合「もっとも権限があるのは乗客対応や指令室との連絡を担う車掌」だという話を聞き、車掌を主人公にすることを決めたそうです。オリジナルと違い、鉄道会社の協力を得られたからこそ、生まれた設定といえるでしょう。
そして、高市の存在がオリジナルとは違う「犯人との関わり方」にもつながります。
●改変ポイント4:犯人の正体は?
オリジナル版の犯人は、町工場の元経営者である沖田とその仲間たちで、それは最初から判明していました。しかし、今回のリブート版では、誰が新幹線に爆弾を仕掛けたのか、その理由は何なのかは、映画の中盤まで明かされず、犯人探しの要素が追加されています。
この犯人の正体が今回、良くも悪くも一番話題になっているポイントといえるでしょう。前述の『キネ旬』のインタビューによれば、樋口監督が最も悩んだのが、「銀行強盗や身代金目当ての犯罪が起きない時代」に、「誰を犯人にするか」という点だったそうです。
「映画秘宝」6月号(秘宝新社)の方の樋口監督のインタビューによれば、「どんな人生を歩んでひどい目にあったら犯行に及ぶのか」「いまの時代に、新幹線に爆弾を仕掛ける意味って何があるんだろう」などの点で犯人像が難航したそうで、それゆえに誰もが驚くような真犯人が設定されています。
これはリメイクではなく、オリジナルの世界とつながっているリブートだからこそ生まれた犯人ともいえるでしょう。なぜ1000億という法外な身代金設定にしたのかも、ここにかかわってきます。
●改変ポイント5:実際に新幹線が爆発!
タイトルとは裏腹に、オリジナル版では「実際に新幹線が爆発する」シーンはありません。もしも爆破したら? という想像のシーンのみです。
しかし今回は、文字通り新幹線が大爆破されます。自他ともに認める「爆発マニア」の樋口真嗣監督だけに、ここはどうしても描きたい部分だったのでしょう。
鉄道会社の協力を得られなかったオリジナルでは車両が爆発せず、特別協力を得たリブートでは爆発するというのも面白い点です。実際にそんなことができるのか、というリアリティーは別として、あくまで作劇としては納得できるように爆発が起きています。どこで、どのように爆発するかは、実際にご覧になって確かめてください。
(竹島ルイ)