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『風、薫る』では「マイルド」にされた「病院を辞めて新潟へ行った本当の理由」 史実で起きた理不尽とは

朝ドラ『風、薫る』は「新潟編」に入りましたが、その前にりんが病院を辞めた理由と史実を比較してみましょう。

正しいと信じたことにまっすぐ突き進んだ大関和

見上愛さん(2024年5月、時事通信フォト)
見上愛さん(2024年5月、時事通信フォト)

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』は、第16週に入って新しい展開を見せています。主人公の「一ノ瀬りん(演:見上愛)」は、患者の死をきっかけに看護婦としての仕事に迷いが生じ、帝都医大病院を辞めることになりました。その後、「大山捨松(演:多部未華子)」の紹介で、新潟の女学校の舎監として働くことになります。

『風、薫る』は明治時代に看護師の先駆者として活躍した、大関和(おおぜき・ちか)をモチーフにした物語です。とはいえ、フィクションなので実際の和の人生とりんの人生はさまざまな部分が異なっています。病院を辞めて、新潟に行く理由も大きな相違点のひとつです。

 看病婦取締だった和は、看病婦たちの労働環境や生活環境に問題があると感じていました。多くの看病婦たちは、睡眠時間もろくに取れないほど過酷な環境で働いていたのです。また、彼女たちの集団生活も劣悪な環境でした。

 和は医師たちに看病婦の環境改善を訴えますが、黙殺されてしまいます。そこで具体的に問題点と改善案を記した「建議案」を提出したものの、これが医師たちの怒りを買い、和と医師たちの関係は最悪になってしまいました。和はもはや病院にいられなくなり、辞めることになります。

 和は自分が正しいと信じることについて、まっすぐ突き進む性格だったと言われています。だからこそ、看病婦たちのために断固として戦ったのです。

 もともと医師たちのなかには、意志を持って働く女性を生意気だと思い、不愉快に感じている者もいたそうです。男尊女卑が強烈だった明治時代において、自分の仕事に誇りを持ち、正しいことだと信じたらまっすぐに実行する和は、うとましく映ったのでしょう。

『風、薫る』では、りんが病院で激しく何かを主張する様子は描かれませんでした。一方、医師たちも看護婦を見下している様子はあれど、激しくりんたちを嫌う様子は描かれていません。エリート医師の「今井益男(演:古川雄大)」も、りんの行動に一定の理解を示していました。史実とは大きく異なっています。

 このような相違は、ドラマのなかで激しい対立を描かないようにすること、男性の医師たちをはっきりした悪人として描かないこと、そして何よりもりんを女性の地位向上を求めて激しく戦ったりしない優しい人間として描こうとしていた結果、生まれたものだと推測できます。ネットなどで炎上を引き起こす要素を、廃した結果なのかもしれません。

 今後、新天地である新潟で、りんがどのように立ち直り、多くの人を助けていくのか、注目したいと思います。

参考:『別冊太陽 大関和 明治のナイチンゲールたち』(平凡社)

(大山くまお)

【画像】え、「確かに整ってる」「見上愛には似てない」「気が強そう」 コチラが「地元で評判の美人」と言われていた『風、薫る』りんのモデルです

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大山くまお

ライター。映画、ドラマ、アニメ、マンガ、プロ野球、名言などについて執筆を行う。中日ドラゴンズファン。著書に『野原ひろしの名言 「クレヨンしんちゃん」に学ぶ幸せの作り方』(双葉文庫)、『名言のクスリ箱 心が折れそうなときに力をくれる言葉200』(SB新書)など。

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