実は「赤字」だった名作アニメ映画 20億以上のマイナスが出た伝説の遺作とは
誰でもタイトルを知っている名作も、日本のアニメを世界に知らしめた名作も、実は“赤字”でした。
宮崎駿、大友克洋、今敏、高畑勲……みんな“赤字”だった!

アニメの歴史を変えるような名作アニメ映画、あるいは今も多くの人に愛されるアニメ映画でも、公開時は意外にも「赤字」だったという作品がいくつもあります。
たとえば、宮崎駿監督の『となりのトトロ』(1988年)は、今でも幅広い世代に愛される名作です。しかし、公開時は苦戦を強いられ、興行収入は11.7億円、映画館の取り分を差し引いた配給収入は5.88億円にとどまりました。『火垂るの墓』との2本立て興行ということもあり、公開時は大幅な赤字を出してしまいます。
しかし、時を経るにつれて『トトロ』への支持は増していき、TV放映は軒並み高視聴率を記録。1997年に発売されたビデオソフトは、190万本という驚異的なセールスを達成します。ぬいぐるみをはじめとするキャラクター商品は1000種類を超え、国民的キャラクターになりました。
大友克洋さん原作・監督の『AKIRA』(1988年)は、一流アニメーターが結集して実現したリアルで緻密な作画と美術が話題となった大作アニメ映画です。製作費は約10億円と言われていましたが、当時の関係者の証言によると7億円ほどだったといいます。配給収入は7億5000万円にとどまっており、製作費を全額回収するには至りませんでした。
その後、北米を中心に人気に火がつき、公式ビデオソフトは10万本の売上を記録します。世界で日本のアニメが人気を呼ぶきっかけになり、「ジャパニメーションの金字塔」と呼ばれるようになりました。現在でも、日本国内外で再上映が頻繁に行われています。
今敏監督の『パプリカ』(2006年)は、筒井康隆さんの小説を元にしたSF作品です。パレードのシーンをはじめとする、悪夢的なビジュアルが大きな反響を巻き起こしました。製作費は約3億円とされていますが、日本での興行収入は1億円強にとどまり、赤字になってしまいます。
しかし、作品は世界的に高い評価を得て、数々の映画祭で受賞しクリストファー・ノーランほか、多くのクリエイターに影響を与えました。公開20周年の2026年冬には、パルコグランバザールとの大々的なタイアップも話題を呼んでいます。
きわめつけの赤字額となったのが、高畑勲監督の遺作である『かぐや姫の物語』(2013年)です。新しい表現を追求し、8年という莫大な時間と労力を費やした結果、製作費は約50億円というアニメ映画としては途方もないものになりました。しかし、日本での興行収入は24億7000万円と発表されており、25億円以上の赤字となった計算になります。
しかし、繊細かつ豪放な描線と水彩で描かれた美しい美術によって、女性のリアルで悲しい物語を描ききったことが高く評価され、国内外の映画祭で多くの賞を受賞しました。日本のアニメ文化を切り開いてきた高畑勲監督の集大成であり、今を生きる日本人なら観ておくべき作品であることは間違いないでしょう。
多くの人に愛されている名作であっても、技術革新を成し遂げた名作であっても、世界に影響を与えた名作であっても、後世にも伝えるべき名作であっても、公開時は赤字でした。
つまり興行成績だけ見ても、作品の価値は分からないということです。興行で成功できれば申し分ありませんが、ビジネス的に成功する作品だけが価値があるわけではないということを強調しておきたいと思います。
(大山くまお)
