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没後10年、『スケバン刑事』和田慎二氏が生んだ「戦うセーラー服美少女」の衝撃

『スケバン刑事(デカ)』「超少女明日香」『ピグマリオ』など、数々の名作を手がけた少女漫画家の和田慎二さんの集大成となる画集『和田慎二ARTWORKS 戦う美少女伝説』(玄光社)が2022年1月31日に発売されます。少女マンガにアクション描写を導入し、男性読者も魅了した和田慎二さんの作品世界を振り返ります。

少女マンガで革命的だった「戦うヒロイン」像

『和田慎二ARTWORKS 戦う美少女伝説』(玄光社)に掲載の『スケバン刑事(デカ)』解説ページ。美内すずえ氏の『ガラスの仮面』とともに二大看板として連載が始まった経緯も紹介 (C) Shinji Wada
『和田慎二ARTWORKS 戦う美少女伝説』(玄光社)に掲載の『スケバン刑事(デカ)』解説ページ。美内すずえ氏の『ガラスの仮面』とともに二大看板として連載が始まった経緯も紹介 (C) Shinji Wada

 累計発行部数2000万部の『スケバン刑事(デカ)』をはじめ、多くのヒット作を生んだ少女漫画家の和田慎二さん。没後10年となった2022年、集大成となる画集『和田慎二ARTWORKS 戦う美少女伝説』(玄光社)が発売されます。

 少女マンガ特有のロマンスを継承しつつ、熱いアクション描写で新境地を切り拓いた和田慎二さんが読者にもっとも衝撃を与えたのが、「戦うヒロイン」の誕生でした。

「帰ってきたわよ、地獄から! あなたたちに復讐するために!」

 和田慎二さんの出世作となったのが、1973年に集英社「別冊マーガレット」に発表された『銀色の髪の亜里沙』です。主人公の少女・本条亜里沙は、クラスメイトによって吐竜窟(とりゅうくつ)という深い穴に突き落とされ、おまけに会社の乗っ取り計画から両親を殺害されてしまいます。

 長い地底生活とショックから「銀髪」となってしまった亜里沙は奈落の底から脱出すると、前述の衝撃的なセリフとともに復讐を始めるのです。

『銀色の髪の亜里沙』は、児童文学の『巌窟王』にインスパイアされた作品で、当時の少女マンガとしては異色の復讐劇でした。かつては少女の夢やロマンスを描くものが主流だった少女マンガですが、1970年頃には、それまでの常識を覆す多様な作品が登場し始めています。

 ライバル作品が続出するなかで、男性作家の和田慎二さんが描いたのは、ヒロインが過酷な運命と戦う「新しい少女マンガ」だったのです。

『銀色の髪の亜里沙』が評判となった和田慎二さんは、1975年に白泉社「花とゆめ」に読み切り作品の『校舎は燃えているか!?』を発表。翌年には、この作品の設定に変更を加えて『スケバン刑事(デカ)』の連載をスタートさせています。

 脱獄不可能と言われる第二高等少年院、通称「地獄城」。その院生である麻宮サキは、死刑囚である母を救うため、命がけの脱出を決意します。彼女の命運を握るのは、黒メガネをかけた謎の男。その正体は警視庁の暗闇警視で、私立姫ヶ窪校で起きた一億円強奪事件の解決を条件に、サキの母親を救うというのです。警察の「桜の代紋」入りヨーヨーを手にしたサキは、学生刑事として学園に潜入します。

 脱獄から始まるという、少女マンガとしては前代未聞の幕開け、そしてスケバンという悪をもって悪を制す破天荒なストーリー。サキがヨーヨーで見せる華麗なアクションとともに、女性はもちろん、それまで少女マンガを手にしたことがない男性の読者層からも支持を集めています。TVドラマ化などのメディアミックスもあり、『スケバン刑事』は少女マンガの裾野を広げた一大作品となりました。

【画像】懐かしい『ピグマリオ』も! 和田慎二作品の貴重な原画や下描き原稿(11枚)

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