「最高かよ!」NHK BSで『カメラを止めるな!』放映 制作費300万円が31億円に化けたゾンビ映画
無名俳優から、売れっ子になったキャストたち

無名キャストしか登場しない『カメラを止めるな!』ですが、映画の公開後は状況が大きく変わりました。
「早い、安い、質はそこそこ」を売りにしていた監督の日暮を大熱演した濱津隆之さんは、2020年に始まった深夜ドラマ『絶メシロード』(テレビ東京系)に主演。長野五輪の内情を描いた実録映画『ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち』(2021年)では、スキージャンパー原田雅彦役を演じるなど、売れっ子俳優となっています。
日暮に無茶ぶりするプロデューサー役の竹原芳子さん(旧名・どんぐり)も、TVドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)にレギュラー出演するなど、個性的なルックスを生かして活躍中です。証券会社や裁判所の臨時事務官を勤めた半生を振り返った『還暦のシンデレラ』(サンマーク)も出版しています。
護身術の「ポンッ」で人気を博したしゅはまはるみさんは、映画界のシビアな内情を描いた『愛のこむらがえり』(2023年)など、多くの映画やTVドラマに出演する名バイプレイヤーに。血まみれのヒロインを最後まで演じ切った秋山ゆずきさんも、Netflixドラマ『今際の国のアリス』シーズン2に出演するなど、さまざまな作品に参加しています。
公開時に心配されたキャストへのギャラ問題
本作で劇場映画デビューを果たした上田慎一郎監督も、名前を知られるようになりました。制作費5000万円の映画『スペシャルアクターズ』(2019年)は、『カメ止め』が大ヒットした直後だけに脚本執筆時に気絶しそうなほどのプレッシャーを感じたそうですが、無名俳優たちの演技への情熱を感じさせる秀作に仕上げています。『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)でブレイクした井桁弘恵さん、R15映画『うみべの女の子』(2021年)が話題となった石川瑠華さんらが主演した『イソップの思うツボ』(2019年)は、『カメ止め』のスタッフとの共同監督作です。
公開時に心配されたキャストやスタッフへのギャラですが、『カメ止め』が予想外の大ヒットになったことで、特別報酬が後日支払われています。バックステージものではありますが、ゾンビ映画やホラーコメディというジャンルが日本で市民権を得ることになったのも、『カメ止め』の大きな功績でしょう。海外にも『カメ止め』の面白さは伝播し、フランス版リメイク作『キャメラを止めるな!』(2022年)が公開されています。
人気俳優や有名原作に頼らずとも、面白い脚本とスタッフ&キャストの情熱があれば、ヒット作をつくることは可能だと、『カメ止め』は証明してみせました。優れた企画や才能に対し、製作サイドが積極的に出資することで、今後も『カメ止め』のような傑作が生まれてくるに違いありません。
ただし、『カメ止め』の成功例は一歩間違えると、映画の世界に夢を抱く若いキャストやスタッフたちの「やりがい搾取」にもなりかねません。映画の制作現場が、よりよい方向に向かうことを願うばかりです。プロデューサーのみなさん、よろしくでーす。
(長野辰次)



