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ひろし役・藤原啓治さんを偲ぶ 理想の父親像を描いた名作『逆襲のロボとーちゃん』

声優の藤原啓治さんは、アニメ『クレヨンしんちゃん』で主人公・野原しんのすけの父親・ひろし役を24年間にわたって演じてきたことで知られています。2020年4月に亡くなられた藤原さんを偲んで、劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズほか、藤原さんの代表作を振り返ります。

ダンディーなキャラが似合った藤原啓治さん

『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』 (C) 臼井儀人 / 双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014
『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』 (C) 臼井儀人 / 双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014

 アニメ『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)の父親・野原ひろし役で、広く親しまれていた声優の藤原啓治さんが、2020年4月12日に亡くなられました。まだ55歳という若さでした。アニメ『鋼の錬金術師』(2003年版・2009年版、TBS系)の愛妻家で子煩悩なマース・ヒューズ中佐、『交響詩篇エウレカセブン』(TBS系)の主人公が憧れるホランド・ノヴァックなど、ダンディーだけど、ちょっと癖のある大人の役がピタリと合っていました。

 洋画『アイアンマン』(2008年)では、トニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)の日本語吹き替えを担当しました。トニー・スタークは大企業の社長ですが、藤原さん自身も声優のマネジメントを中心にした「AIR AGENCY」を2006年に立ち上げ、代表取締役を務めていたことが知られています。

 劇場版「クレヨンしんちゃん」シリーズは、ABEMAビデオなどで現在ネット配信されています。その中から、藤原さん演じる野原ひろしが大活躍した名作3本をご紹介します。

大人になる喜びを教えてくれた

「大人も号泣した」と絶賛されたのが、原恵一監督が撮った『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)です。いつもは強烈な足の臭いで家族から嫌われている野原ひろしですが、『オトナ帝国の逆襲』は臭いそのものが大きなモチーフとなっています。

 ノスタルジックさに満ちた「20世紀博」に行って以来、ひろしも妻のみさえも大人であることを放棄して、働かなくなってしまいます。ひろしはすっかり幼児退行していたものの、息子のしんのすけに自分の足の臭いをかがされ、正気を取り戻します。このシーンでは、ひろしが田舎で育った少年時代、学生時代の初恋と失恋、上京しての就職、みさえとの出会いと子供たちの誕生までの記憶が走馬灯のように描かれました。

 ひろしの足の臭いは、一家の大黒柱として働く者の生活臭でもあったのです。足は臭うようになったけれど、大人になり、家庭を持つことの喜びをひろしが思い出す、名シーンとなっています。

 同じく原恵一監督が撮った『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』(2002年)も、評価が高い作品です。戦国時代にタイムスリップしたしんのすけを追って、ひろしは危険を顧みずに助けに向かいます。ひろしとしんちゃんとの親子の深い絆を感じさせます。

【画像】故・藤原啓治さんが演じた名キャラクターたち(7枚)

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