マグミクス | manga * anime * game

『あんぱん』子供はつい「ネタ」にしちゃう「愛と勇気だけが友達さ」の歌詞 やなせたかしが込めた「覚悟」とは

『あんぱん』128話では、アニメ主題歌「アンパンマンのマーチ」が生まれました。最終週のタイトルはこの曲の歌詞『愛と勇気だけが友達さ』ですが、どのような意味が込められているのでしょうか。

最終週のタイトルもかなり重要?

柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)
柳井嵩役の北村匠海さん(2020年11月、時事通信フォト)

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんとその妻の暢(のぶ)さんをモデルにしたNHK連続テレビ小説『あんぱん』の128話では、『アンパンマン』に惚れこんだTV局プロデューサーの「武山恵三(演:前原滉)」の熱意が実を結び、「柳井嵩(演:北村匠海)」が『アンパンマン』のTVアニメ化を認めました。

 そして、嵩は自分でアニメの主題歌を考え、誰もが聴いたことがあるであろう『それいけ!アンパンマン』の「アンパンマンのマーチ」の初期の歌詞が読み上げられます。当初は「たとえ胸の傷がいたんでも」の部分が「たとえいのちが終わるとしても」、「いけ!みんなの夢まもるため」の部分は「いけ!悲しみを消すために」になっていました。

 そのほかにも同曲にはさまざまな有名なフレーズがあり、『あんぱん』の週ごとのタイトルにも「なんのために生まれて」(3週目)、「なにをして生きるのか」(4週目)が使われています。そして、最終週第26週のタイトルは「愛と勇気だけが友達さ(歌詞では『ともだちさ』)」です。

 最後の締めくくりに、この2番のサビの有名な歌詞を持ってきたことに関して、SNSではさまざまな反応が出ています。なかには子供のときに、「アンパンマンには愛と勇気しか友達がいない」という風にネタにしていたことを懐かしんだり、反省したりしている方の声もありました。幼児から小学生、中学生と成長していくなかで、こういった話題に触れた方も多いでしょう。

 歌詞を書いたやなせさんにも「愛と勇気だけがともだちさ」についての意見は届いていたようで、いくつかの書籍でこの言葉に込めた意味を語っています。

『これじゃあ死ぬまでやめられない!: 続オイドル絵っせい』(フレーベル館)という本では、やなせさんは

「『アンパンマンは愛と勇気だけで他に友だちはいないんですか?』と質問されることがある。友だちも仲間も大勢いる。友情で結ばれている。しかし命がけで自分を犠牲にしても戦う時は自分ひとり、他人の協力をアテにしないということだ」

 と綴っていました。同書を読むと、アンパンマンだけでなく、やなせさん本人も「ここぞという時は自分ひとり、他人をアテにすることはない。アテにして外れた時は恨むことになる」という方針があったようです。

 また『わたしが正義について語るなら』(ポプラ社)という書籍では、やなせさんは「愛と勇気だけがともだちさ」という歌詞で抗議が来たことを語り、続けて「これは、戦う時は友達をまきこんじゃいけない、戦う時は自分一人だと思わなくちゃいけないんだということなんです。お前も一緒に行けと道連れを作るのは良くないんですね」「横断歩道もみんなでわたれば怖くない、悪いことをする時にも群衆でやれば怖くないというのがあるけど、責任は自分で負うという覚悟が必要なんだということなんです」と述べています。

 やなせさんは1973年の絵本『あんぱんまん』(フレーベル館)のあとがきで「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身の心なくしては正義は行えません」と語っており、同様のことをさまざまな書籍、インタビューでも言っていました。

「愛と勇気だけがともだちさ」という言葉には、捨て身で正義を行うために戦って「深く傷つく」のは自分だけでいいという、アンパンマンとやなせさんの覚悟も感じられます。

『あんぱん』最終週では「しょくぱんまん」「カレーパンマン」ら仲間たちも多数生まれていますが、それでもいざというときは「愛と勇気だけがともだち」だと思ってひとりで戦うアンパンマンの気持ちについて、どこかで語られるかもしれません。

(マグミクス編集部)

【画像】え、史実では「メガネ美人」「今田美桜とは違うタイプ」 こちらがやなせたかしさんが「一目惚れ」した妻・暢さんの若き日の姿です

画像ギャラリー