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JAXAの実験が証明した? 『シン・エヴァ』ミサトの戦艦が放った「種子の方舟」は現実になるか

新作『エヴァンゲリオン』シリーズの制作が発表され、『エヴァンゲリオン放送30周年記念特別興行』短編アニメーションがYoutubeにて公開された今、改めて『シン・エヴァンゲリオン劇場版』をぜひ観てほしいです。なぜなら現実世界の「命をつなぐ」研究が、同作の世界観に追いつこうとしているからです。

『シン・エヴァ』は「命を残す」物語でもあった

2021年公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ポスタービジュアル (C)カラー
2021年公開の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ポスタービジュアル (C)カラー

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズは、碇シンジをはじめとする14歳の少年少女たちが、汎用人型決戦兵器人造人間「エヴァンゲリオン」に乗り込み、謎の巨大生物「使徒」との戦いを繰り広げる物語です。2007年から2021年にかけて全4作が劇場公開されました。

 シリーズ第3作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012年)で、ある理由からシンジらが所属する特務機関「NERF(ネルフ)」で内部分裂が発生。物語は、碇ゲンドウ率いるNERFと、葛城ミサト率いる「WILLE(ヴィレ)」の対立構造になりました。もはや「人間 VS 使徒」ではなく、人間と人間の戦い、そしてシンジと父・ゲンドウの対峙を描くのが、シリーズの完結編である『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年)です。

『新劇場版エヴァンゲリオン』シリーズのテーマのひとつは、「命を残す」ということでした。

 主人公のシンジは、シリーズ第2作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009年)で、意図せず「ニア・サードインパクト」という地球規模での大災害を引き起こしてしまいます。シンジは大切な人と人類を守るために戦いましたが、あまりに悲惨な結果をもたらしました。

 しかし、そのニア・サードインパクトから奇跡的に生き残った地域が日本にありました。「第三村」です。小規模で決して豊かではない暮らしではありますが、シンジが戦った結果、命が残されたのです。

宇宙へ向かう「たんぽぽの綿毛型ユニット」

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、「種子補完ユニット」を放った戦艦「ヴンダー」を立体化した、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版 Ultra Scale AAAヴンダー塗装組立済みプラキット」(画像:壽屋)
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、「種子補完ユニット」を放った戦艦「ヴンダー」を立体化した、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版 Ultra Scale AAAヴンダー塗装組立済みプラキット」(画像:壽屋)

 この「命を残す」という営みは、「地球の生態系全体」というマクロ的な規模でも試みられています。それが、空中戦艦「ヴンダー」から射出された「種子保管ユニット」です。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』作中で、ヴンダーにはふたつの顔があることが明かされます。ひとつは「命を救う戦闘艦」。もうひとつが「命を残す方舟(はこぶね)」です。

 後者の「方舟」として機能するのが、ヴンダーに搭載された「種子保管ユニット」です。

 もともとこれは、『破』から『Q』の間に亡くなった加持リョウジが考案していた装置です。彼が育てていたスイカなど、さまざまな生命を保存しています。詳しい説明はありませんでしたが、植物の場合は種子、動物の場合は冷凍した肉体やDNAが入っているのでしょう。

 加持の遺志を受け継ぐヴンダー艦長・葛城ミサトは、最終決戦の前に種子保管ユニットを宇宙空間へ放ちました。

 種子保管ユニットを地球から放り出し、火星にでも到達すればよい。そうすれば地球上で「人類補完計画(アディショナル・インパクト)」が発動しても、地球の全生命体が滅亡することはない……という考えです。

 ここで着目してほしいのが、ヴンダーから離れたユニットの形状です。細長く、たんぽぽの綿毛のような形をしています。

 この、「生命が故郷の星を離れて生き延びる」というのは、SFだけの話ではありません。現実世界においても、「生命は惑星の間を行き来しているかもしれない」という研究結果があるのです。

 それが、国際宇宙ステーションで行われた「たんぽぽ計画」と呼ばれるJAXAの生命実験です。

JAXAの実験結果が実証? 生命は宇宙を旅できる

現実の「たんぽぽ計画」が実施された、国際宇宙ステーション(画像:東京薬科大学のプレスリリースより)
現実の「たんぽぽ計画」が実施された、国際宇宙ステーション(画像:東京薬科大学のプレスリリースより)

「たんぽぽ計画」は2015年に国際宇宙ステーションで行われました。この生命実験の名前は、たんぽぽの種が風に乗り、新天地で根を下ろすというイメージから付けられました。

 JAXAを中心とした研究チームは、極限環境微生物(デイノコッカス・ラジオデュランス)を国際宇宙ステーションの船外へ運び、太陽から降り注ぐ放射線に3年間さらし続け、生存できるのかを調査しました。

 実験の結果、微生物を集めて塊状にすれば、宇宙空間でも数年から数十年生きられることが判明しました。塊の外側部分が放射線をさえぎる盾になるのです。塊状でなくても、小惑星や彗星のような岩石のなかにいれば生存可能とも考えられています。

 微生物の塊や岩石は、惑星上の火山活動や、台風、あるいは大気中の放電現象などによって宇宙空間へ出ることができます(『科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?』佐藤勝彦監修/河出書房新社)。

 火星でも火山活動や台風は起きており、こうした自然現象が火星で起こって、小さな岩石が地球へ向かう軌道に乗ったとしたら? 最短で数か月ほどで地球表面へ到達します。

 実際に、火星からやってきた岩石が隕石として地球に降ってくることは、まれながら確認されています。現在までに火星から飛来した隕石は約400個発見されています。

「生命の起源」については、いまだに分からないことだらけです。実は、地球上の生命体がそもそも地球で生まれたのかどうかさえ、はっきりしていません。

 そのため「たんぽぽ計画」の研究チームは、2020年8月の論文で、「地球最初の生物は火星で誕生した可能性もある」と指摘しました。そこから生命の進化が始まり、地球の生態系を形作ったのだとしたら……。太古の昔、惑星間を行き来する「方舟」が実在していた可能性も考えられるのです。

現実と区別がつかなくなりそうな「エヴァ」の世界観

 ここで、エヴァの話に戻します。

 第2の使徒「リリス」も、小惑星に乗って宇宙からやってきた生物です。そしてリリスの肉体は数十億年もの間、生命の源となる液体「L.C.L」を流し続けます。

 作中でL.C.Lは「生命のスープ」と説明されますが、これも現実を反映しています。地球上の生命の分子組成を見ると、水が約70%、タンパク質が約15%を占めています。つまり、あらゆる生命は「スープ(タンパク質水溶液)の入った革袋」なのです。

 エヴァの世界では、生命の起源が「第3新東京市」(現実世界の箱根)の地下に眠っていました。リリスという巨大な異星人を発見し、しかもそれが人類の祖先だと判明したときは、誰もが驚いたはずです。

 地球生命を守るため、加持は科学の力で方舟を作り上げました。それが火星など別の惑星に着陸すれば、地球の生命が新天地で生態系を築くことでしょう。

 そして長い年月をかけて進化は続き、再び知的生命が誕生するかもしれません。もし彼らが自分たちの祖先を知ったとしたら、どう思うでしょうか。さらに、渚カヲルのような美少年が現れ、「また会えたね」などと優しく声をかけてきたとしたら……!

 現実とエヴァの世界の境界が分からなくなってしまいます。そんな妄想が、いくらでも広がってしまいそうです。新作「エヴァ」シリーズが見せてくれる世界に、期待せずにはいられません。

あなたの人生には「命を残す」物語はありますか?

 個人的な話ですが、筆者も「命を残す」実体験がありました。

 数年前、次男が生まれました。しかし、先天性の重大な心疾患があると判明し、出産後すぐに手術することが決定。手術は成功し、今では元気に育っています。

 彼の名前は生まれてから決める予定でした。長男の名前に漢数字の「一」が入っているので、次男には「二」を入れようと夫婦で話し合っていました。

 手術の直前に決めた次男の名前は「進二(シンジ)」です。

 どんな困難があっても前へ前へ進んでほしいという願いを込めました。この名前以外にはありえないと、夫婦ふたりで泣きながら決めたのです。

 大学病院へ搬送される様子を筆者は見ていました。次男の体の周囲には、膨大な数の生命維持装置と、口の中に挿入されていた何本ものチューブ。深夜、多くの大人たちが次男の命のために、豆粒ほどの大きさの心臓を守ろうと、懸命に戦っていました。

 最後に、「命を残す」物語を私たちに届けてくれた庵野秀明総監督と樋口真嗣監督に、心より感謝を申し上げます。次回作も楽しみにしております。

※参考文献
・細胞機能学研究室 https://www.ls.toyaku.ac.jp/~lcb-7/tanpopo/
・『科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?』佐藤勝彦監修/河出書房新社

(「細かすぎる」エンタメ研究所所長TSUYU(ASDさん))

【画像】「えっ」「マジだった」これが現実の宇宙で生き延びた「たんぽぽの方舟」です(4枚)

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