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マンガ『クレヨンしんちゃん』の衝撃 アニメと違って「原作は過激」は本当なのか

『クレヨンしんちゃん』も原作連載30周年。国民的アニメとなった『クレしん』も、その始まりは青年誌でした。改めて原作とアニメ、その相違点を振り返ってみましょう。

原作『クレヨンしんちゃん』で描かれるのは「若い夫婦」としてのひろしとみさえ

著:臼井儀人『クレヨンしんちゃん』第1巻(双葉社)
著:臼井儀人『クレヨンしんちゃん』第1巻(双葉社)

 国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』(原作:臼井儀人)。原作30周年ということで記念イベントが開催されるなどアニバリーイヤーにふさわしい盛り上がりをみせています。そんな『クレヨンしんちゃん』ですが原作とアニメでは大きく雰囲気が違うことはたびたびネットでも話題になってきました。そこで本稿ではアニメと原作に違いを紹介しつつ『クレヨンしんちゃん』が四半世紀以上にわたり愛される理由についても考えていきます。

●まず単行本を手にとってみると…そういえば服から違う!

 1990年に「週刊漫画アクション」(双葉社)で連載が開始された『クレヨンしんちゃん』。「週刊漫画アクション」は青年誌です。過去には『ルパン三世』(モンキーパンチ)や『じゃりン子チエ』(はるき悦巳)などが連載されていました。『ドラえもん』や『ちびまる子ちゃん』とは違い、あくまでも「大人向け」の作品として登場したのです。

 原作とアニメの違いは多々ありますが……まずは細かいところから。

 例えばしんのすけの服装はアニメだと上は赤いトレーナー、下は黄色の短パンなのに対し原作だと上は山吹色で下は紫です。また幼稚園の名前もアニメでは「ふたば幼稚園」ですが、原作では連載誌の名前から「アクション幼稚園」となっています。アクション仮面の名前の由来も連載誌からとったものでした。

 アニメではおなじみのおやつ「チョコビ」も原作初期だとまだ登場しません。初期のしんのすけの好物ははっきりと「コアラのマーチ」と明記されています。その後3巻で「チョコビスケット」なるものが登場し、4巻では筒型のパッケージに入った「チョコビー」が登場します。(これがすなわち「チョコビ」なのかどうかは不明です)

 なお原作を読むとしんのすけのひょうひょうとした態度、マサオくんなどの友達に対しての素っ気なさに驚かれる人もいるかもしれませんが、これ自体は原作に限ったことではなく初期アニメでもそうでした。

●「原作は過激」は本当なのか…? 若い夫婦として描かれるひろしとみさえ

 アニメと原作の決定的な違いは「大人目線」か「子供目線」か、といえそうです。アニメではしんのすけ目線(=視聴者である子供目線)で描かれるため、母みさえは「妖怪けちけちオババ」であり、父ひろしも「足くさサラリーマン」「よっぱらいじじい」なんて言われてしまいますが、初期原作ではあくまでも「5歳児を育てる若い夫婦」という描かれ方をされます。

 夫婦生活をしんのすけに邪魔される場面などは割とひんぱんに描かれますし、(しんちゃんが避妊具をチューイングガムと勘違いするシーンは有名です)それ以外にもみさえがつわりか生理不順かはっきりせずに悩んだりする場面など「若い夫婦」に起こり得るさまざまな事象がピックアップされるのも特徴です。時々「原作は過激」などの声も見受けられますが、これはあくまでもアニメと比べたらであり、青年誌連載マンガであることを考えればむしろ描写自体はマイルドです。

 そしてアニメと原作、一貫して変わらないことは「大人はしんのすけに振り回される存在」という揺るぎない構図です。これは原作者・臼井儀人先生のスタイルを製作陣が今もなお踏襲し続けているからなせるワザ。外出先でしんのすけがいかなる嵐を呼ぼうとも最後には必ずみさえ、ひろしが謝るシーンが挿入されます。しんのすけ、ひいては子供たちの自由を保障しているのはあくまでも大人なのです。ここに『クレヨンしんちゃん』が世代を超えて愛される理由のひとつがあります。大人がいる限り、しんのすけは自由なのです。

 現在、『クレヨンしんちゃん』は「まんがタウン」(双葉社)で『新クレヨンしんちゃん』として連載中です。

(片野)

【画像】アニメと変わらない、みさえとひろしがしんのすけに振り回される原作

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