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読める?「踊っちまった」「もっと極悪ろ」 ヤンキーマンガのフリガナ語録

『疾風伝説 特攻の拓』、『湘南爆走族』、『ビー・バップ・ハイスクール』など懐かしのヤンキーマンガには“特殊な振り仮名(ルビ)”を使ったセリフがさまざま登場しています。日本マンガ特有の楽しみポイントである、ヤンキーマンガのルビを振り返ります。

40年経っても受け継がれる“美学”

著:和久井健『東京卍リベンジャーズ』第3巻(講談社)
著:和久井健『東京卍リベンジャーズ』第3巻(講談社)

 今から約40年前、『湘南爆走族』をはじめとしたヤンキーマンガがブームとなりました。そこから『ろくでなしBLUES』、『カメレオン』、『クローズ』など数々の作品が誕生し、日本特有の人気ジャンルになっています。そしてヤンキーといえば「夜露死苦(よろしく)」「愛羅武勇(アイラブユー)」など当て字文化がありますが、マンガの世界でも独特でユニークな当て字・読み方が登場しています。有名作品にはどのようなものが登場していたか振り返ります。

 まず、この話題で絶対に欠かせない存在になっているのが『疾風伝説 特攻の拓』です。1991年から「週刊少年マガジン」にて連載された本作は、いじめられっ子の浅川拓が転校生の鳴神秀人に憧れ、ツッパリデビューを果たす暴走族マンガ。まずタイトルの読み方が特徴的で、「疾風(かぜ)伝説 特攻(ぶっこみ)の拓」と読みます。これが正しく読めるかで世代が分かるとネット上でも話題になりました。作中セリフの振り仮名(ルビ)も印象的なものが多いです。「音色(トーン)」、「機械(マシン)」、「出発(デッパツ)」など。なかでも有名な「“事故”る奴は…“不運(ハードラック)”と”踊(ダンス)”っちまったんだよ…」というものも。暴走族のチーム名に関しても「朧童幽霊(ロードスペクター)」など特殊なルビが多いのが本作の魅力でした。

 続いて、1983年から「週刊ヤングマガジン」で連載された『ビー・バップ・ハイスクール』では少しおしゃれなルビが登場。本作は留年(ダブり)高校生コンビ、ヒロシとトオルのケンカと恋のツッパリの日々を描き大ヒット。実写化もされ、映画版には「高校与太郎哀歌(エレジー)」や「高校与太郎狂騒曲(ラプソディー)」といったサブタイトルが付けられています。

 当時のヤンキーマンガは『疾風伝説 特攻の拓』のように、バイクや暴走族をテーマに描いた作品が多く、走り屋のチーム名も注目ポイントでした。「夜露死苦(よろしく)」のようにユニークな当て字が採用され、例えば『湘南純愛組』では「暴走天使(ミッドナイトエンジェル)」、『カメレオン』の「松戸苦愛(まつどクラブ)」、『荒くれKNIGHT』の「輪蛇(リンダ)」……などなど。なかにはそもそもの読み方すらわからない漢字を使ったチーム名も登場しています。

 そして難読漢字がゴロゴロ登場するヤンキーマンガも。1985年から「週刊少年ジャンプ」で連載された『魁!!男塾』(“ヤンキーマンガ”とするかは賛否あるでしょうが)です。スパルタ教育を行う男塾を舞台に剣桃太郎たち塾生活躍を描いた作品ですが、武道大会の「天挑五輪大武會(てんちょうごりんだいぶかい)」、決闘法の「驚邏大四凶殺(きょうらだいよんきょうさつ)」、「大威震八連制覇(だいいしんぱーれんせいは)」、キャラクター「大豪院邪鬼(だいごういんじゃき)」……どこまでついて来られましたか? 『魁!!男塾』には読者も根気が必要な固有名詞がわんさか登場します。このような難読漢字の続出は『呪術廻戦』や『鬼滅の刃』でも話題になりましたが、人気作のヒットの秘訣なのでしょうか。

 ヤンキーマンガは80年代、90年代に特に人気を博したジャンルですが、令和の作品ではどうなっているでしょうか。累計発行部数3200万部を突破している人気作『東京卍リベンジャーズ』を見てみましょう。本作でも暴走族が登場するだけに、やはりチーム名は特徴的です。「黒龍(ブラックドラゴン)」、「愛美愛主(メビウス)」、「芭流覇羅(バルハラ)」……読みは英語由来ながらも、見事な当て字に変換されています。そして作中では「もっと極悪(きわめ)ろ」と、なんとも痺れるセリフも登場。大ブームから約40年経った現在でも、ヤンキーマンガの“美学”は脈々と受け継がれています。

(椎名治仁)

【画像】令和の日本を席巻! 『東京卍リベンジャーズ』キャラがご当地方言で喋る(6枚)

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