旧ザクが魔法少女化?『ガンダム』異色の作風に衝撃 時代を先取った驚きの設定とは
1986年放送の『機動戦士ガンダムZZ』から1993年放送の『機動戦士Vガンダム』までの7年間、「ガンダムシリーズ」は劇場作品やOVAなどコアなファン層の裾野をさらに広げていきました。そのファンダムの世界でさらなる醸成が進むなか、マンガの世界から「迷作」が誕生することになります。
『ジークアクス』を思わせる要素も?

1989年、旧バンダイの出版部門が発行するアンソロジーコミック誌「サイバーコミックス」に、異色のガンダムマンガが掲載されました。タイトルは『魔法の少尉ブラスターマリ』。全7話+αで描かれるのは、なんと「魔法少女」とガンダムシリーズを掛け合わせたパロディ作品です。
「サイバーコミックス」は旧バンダイの出版部門が発行していたこともあり、数々の収録作のなかにはオリジナルのガンダムマンガや、パロディのガンダムマンガが多数収録されていました。当時はちょうど、『機動戦士ガンダムZZ』の放送や、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で「ガンダムシリーズ」が公式・パロディともに盛り上がっていた頃。書籍の世界もその影響を受け、ホビー情報誌「エムジェイ(模型情報)」に掲載された『ダブルフェイク アンダー・ザ・ガンダム』、サイバーコミックス掲載の『Gの影忍』や『機動戦士ガンダム アウターガンダム』などを連載していました。
『魔法の少尉ブラスターマリ』は上記3作と異なる魔法少女路線でありながら、反対にそのギャップと切れ味鋭いアイデアで強いインパクトを与えていた池田恵先生の作品です。
登場キャラクターも上記3タイトルと異なり、メインで語られるのは、サイド3に住むジオン側の主人公一家です。主人公はジオン第6小学校の5年生「マリコ・スターマイン」。幼いころに母をなくし、ジオン軍人の父の留守を預かりながら、イタズラざかりのふたりの弟であるバンとダイの世話をしていました。
洗濯に命をかけ、イタズラをする弟たちには、布団叩きでお尻を叩いて言い聞かせる。まさに母親代わりのしっかり者。口ぐせは「この美しい青空には、一点の汚れもない洗濯ものだけが許されるのよ!」です。
そんな彼女の前にある日突然現れたのは、白馬に乗ったマスク姿の「魔法使い」でした。そう、あの「赤い彗星」です。赤い彗星から「魔法の布団叩き」を贈られたマリコは、それで大人の姿「ブラスターマリ」に変身すると、格納庫にあった旧ザクを無断で操縦して、襲い来る連邦のMSのお尻を叩いて撃退するのでした。
全体的に魔法少女のパロディでありながら、ジオン側の視点で物語が進むのが注目点です。また家族の絆や、後半で登場する義母との関係に悩む姿など、ただのパロディで終わらないのがおもしろいところ。
もちろんジオンと連邦の戦争にかかわる事件も起き、物語は壮大なるクライマックスへと向かうこととなります。
さらに面白いのは「赤い彗星」の正体でした。
当初はただのパロディかと思いきや、本来のシャア・アズナブルも登場して「それならこの人は誰?」と、ちょっとしたミステリー気分も味わえます。結果的にその人物は「シャア・アズナブル」にならなかった世界線の、「キャスバル・レム・ダイクン」であることが明かされ、魔法が存在する世界ならではの不思議な展開も見せてくれました。
このあたりは『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(ジークアクス)を思わせる要素であり、時代を先取りするネタです。
そして「ガンダムシリーズ」ファンとして嬉しいのは、やはり旧ザクが主役メカとして描かれている点です。アニメ本編でも時代遅れのMSと言われていましたし、さらに1話しか登場しないという、限られた場でしか活躍できなかった機体です。それがまさか、魔法の布団叩きを使うものの主役機として活躍する日が来るなど誰が考えたでしょう。
当時のマンガ作品はそういった自由な発想がユニークで、だからこそ今でも愛されるパロディ作品として記憶に残っているのではないでしょうか。
なお『魔法の少尉ブラスターマリ』は電子書籍で読むことができるので、ご興味があればぜひ。
(気賀沢昌志)
