蟹が美味しい季節です! 特撮界で愛される「カニ怪獣」たち
特撮作品ではこれまでさまざまなカニ怪獣が登場しており、日本人のカニ好きが伺えます。マッハ6で飛んだり、ハサミでロケットパンチを繰り出したり、相撲を取ったり……活躍ぶりもさまざまなカニ怪獣をご紹介します。
昭和ウルトラマンで次々と登場
世界中で食されている「カニ」ですが、日本人のカニ好きは群を抜いています。カニは「冬の味覚の王様」とも呼ばれ、旅行プランでも目玉級に扱われる存在。そんな日本人のカニ好きは、日本が得意とする特撮作品にも表れています。特撮界ではカニを模した怪獣が時代を問わず登場し、制作者があの手この手でカニを「怪獣化」してきた歴史があります。
例えば、『帰ってきたウルトラマン』には宇宙を高速で飛行するカニが登場しました。名前も直球で、「かに座」を逆さまから呼んだ「ザニカ」。故郷のかに座を追われ、地球にやってきたザニカの手はもちろんハサミ。つぶらな瞳を持ち、カニ怪獣のなかでもトップクラスで可愛いデザインですが、宇宙空間をマッハ6で飛行するのが特徴です。
『ウルトラマンレオ』にも飛行するカニ怪獣が登場しています。放送当時の日本は空前のUFOブームが到来しており、そんな影響も受けてカニもUFO化されました。宇宙カニと宇宙怪獣を合体させたという円盤生物「ブラックドーム」は、巨大なはさみと口から吐く溶解性の泡でレオを苦しめました。
『ウルトラマンA』の第15話「黒い蟹の呪い」に登場したのはキングクラブです。英語で「キングクラブ」はタラバガニを意味しますが、作中ではカブトガニと宇宙怪獣が合体した大蟹超獣として登場しています。エースと相撲を取るなどユニークな活躍を見せ、あごのハサミは左右で大きさが違う凝ったデザインとなっていました。
続く『ウルトラマンタロウ』でも「大ガニ怪獣ガンザ」が登場しています。見た目は二本足で立つカニで比較的ストレートなデザインでしたが、最大の特徴はロケットパンチのように射出できるハサミです。そのハサミを武器にタコ怪獣のタガールと死闘を繰り広げ、タコ足を切断し勝利を収めています。
平成ウルトラマンでも、ゴジラ映画でも重宝される「カニ」
元号が変わり平成になっても、カニの人気怪獣が出てきました。『ウルトラマンダイナ』第25・26話には「レイキュバス」という怪獣が登場していますが、ゲーム作品のキャラとしても採用率が高く、ソフビ化の機会も多い、ウルトラシリーズの仲間でも屈指の人気怪獣となっています。エビとカニを合体させた外見に、左右で大きさが非対称のハサミを持ちます。この怪獣は、地球を水の星に作り替えようとした氷棲生命体スヒュームが操っており、炎と冷気どちらの能力も持ち合わせているという、器用な怪獣でした。
一方、東宝特撮でも1966年の映画『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』にて、今も根強いファンを持つ「エビラ」が初登場します。放射性廃液の影響で巨大化したエビという設定ですが、カニのように大きなハサミを持ち、どちらかといえばザリガニのような怪獣です。さらにその後は、『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ決戦!南海の大怪獣』で、よりカニ感が強い怪獣「ガニメ」も登場しています。
こうして振り返ると、やはり特撮の世界でカニというモチーフが愛されていることがよくわかります。もとのカニ自体がクリーチャー感あるシルエットを持っている上に、横歩きで愛嬌ある姿をしているため、本来子供向けの特撮作品としてはうってつけの題材なのかもしれません。
ちなみにカニの大きなハサミは、物を食べるのに使っていたものが、戦ったり獲物を捕獲したりしやすいように、長い時間をかけて進化したものだそう。そもそもカニは自然界の怪獣でもあったのです。
(椎名治仁)