ずっと見ていたい『ゴールデンカムイ』のイケてるバディたち ジジイ同士の絆も泣ける
歴史ファンも狂喜の新撰組バディ再び
●凄みのある老バディ 土方&永倉
かつて新撰組で鬼の副長と恐れられた土方歳三と、最強剣士と謳われた永倉新八は、酸いも甘いも噛み分けた凄みのあるバディです。史実では箱館戦争で亡くなったはずの土方ですが、作中では密かに監獄に捕らえられて生きていました。それを知った永倉が、彼と独居房の扉越しに何十年ぶりに言葉を交わした場面は胸にしみます。土方は永倉をかつてのアダ名で「ガムシン(我武者羅な新八)」と呼び、一緒に馬鹿をやったと懐かしみ……老境に入りながらも、ふたりはその時、新撰組時代の変わらぬ同志に戻っていました。
土方の脱獄後、行動をともにするふたりにワクワクするのは、歴史ファンだけではないでしょう。老いてなお血気盛んな土方が、茨戸の戦いで「退却する者は斬り捨てる!!」と吠えた際は、好々爺然とした永倉も懐かしそうな感慨深げな顔を浮かべます。そして、永倉も「一度この永倉新八に火を付けたら 全員の返り血を浴びんと鎮火せんぞ?」と凄んで、一刀のもとに敵を斬り伏せました。とにかく、ほれぼれするカッコよさです。
永倉は、濃くつきあったバディだからこそ、土方が戦う本当の理由も感じとっています。彼曰わく、「土方さん…あなたは死に場所が欲しいんじゃないのかね?」と……。もちろん土方は肯定しませんが、それは土方自身でさえも気づいていない本音のように思えました。その後も、最終決戦までこのふたりの胸アツ場面が続出します。
●絆が深まりゆくバディ 鯉登&月島
第七師団の鯉登音之進少尉と月島基軍曹は、物語が進むにつれて関係が深まっていくのが如実にわかるバディです。
士官学校を出たばかりの新米少尉の鯉登は、年上の軍曹・月島の補佐を受けて軍務を学び、上級指揮官へ進む……という立ち位置なのですが、鶴見中尉に心酔するあまり奇行に走ってしまいがちです。月島に鶴見中尉の写真を持ってこさせたり、鶴見中尉の前では緊張して早口の薩摩弁になってしまうため月島に通訳させたり……。当初、鯉登は月島にとって、ただただ「面倒くさい」人物でした。
けれども次第に月島は、鯉登の世話女房のような空気を漂わせ始めます。たとえば樺太で村に泊まることになった時は、「もっと大きな街なら立派な旅館もあるだろうに」と恨めしげな鯉登に、「街には明日寄っていきましょうね」とすかさずフォローしたり、小さなトナカイを見ている鯉登を、手を叩いて呼び寄せたりしていました。
そして、鯉登の月島への気持ちも変わっていきます。杉元たちを追う流氷原で月島とはぐれたことに気づいた鯉登は、必死で月島の名を呼ぶのです。それまで無茶な命令をするためにばかり呼んでいたその名を我を忘れたかのように呼ぶさまは、深まる信頼関係を感じさせました。やがて私たちが目にするのは、鶴見中尉にたてついてでも月島を守ろうとする鯉登の姿……胸を打たれます。そして、悲しい過去を持ち、荒んでいた月島の心もだんだんと変わっていきました。
『ゴールデンカムイ』には、まだまだ他にもイカしたバディたちがいます。漫才コンビのような門倉利運とキラウシ(シは小文字)、アシリパさんだけでなく白石とも何度も見事なコンビネーションを見せる杉元、往年の怪物映画を彷彿とさせる怪人オベンチョ(牛山辰馬)と少年チヨタロウの触れ合い、敵対しながらもある意味いちばん心が通じ合っていた尾形とヴァシリ、序盤で杉元に最高のバディだった双子の片割れ・洋平を殺された二階堂浩平、バディを超えてベストカップルとして名高い親分と姫など、それぞれの独特なバディの形をぜひ、読んで感じてみてください。