【漫画】顧客からの「修正依頼」にデザイナー憤慨! しかし「やむなし!」と引き受けた理由とは?
社内報のデザインの仕事で、次々と寄せられるクライアントからの修正の指示。最終的にデザイナーが「やむなし!」と面倒な修正を引き受けた理由とは? 中村環さんが、実体験をベースにしながら描いたマンガ『林田さん!修正です!!』を公開しています。
デザイン系の企業で働いていた作者の経験をもとにした作品

デザイナーの多くが経験するクライアントからの無茶振り。中村環さん(@nakamura_tamaki)がTwitterで公開したマンガ『林田さん!修正です!!』では、社内報のデザインの外注を受けたデザイナー&営業コンビの奮闘が描かれています。さまざまな修正の指示に振り回されながらも、最後はほっこりとさせられる内容です。
読者からは「あるある(笑)と思いながら読みました」「優しい世界」「最後はまさにやむなしですね」「素敵なオチ」などのコメントが寄せられました。Twitter投稿には1800件を超えるいいねが集まっています。
作者の中村環さんに、お話を聞きました。
ーー本作は実際の出来事をもとにしたマンガとのことですが、フィクション・創作の要素も含まれているのでしょうか?
本作は、数年前まで、東京の印刷系の会社で営業のアシスタント、DTPオペレーター、デザイナーをしていたときに経験したことをほぼそのままお話にしています。社内的な立場が理由での人物の配置の入れ替え、家族関係が理由での配置の入れ替え、干支の漢字の形に人物を配置したのもノンフィクションです。酉年で、クライアントが「鶏の形に人物を配置したい」とおっしゃって、困った私が先輩に相談して、その結果「酉の字」に並べた覚えがあります。
創作部分がどこかというと、本来は、社内報の1ページにこんなに修正が入ることは珍しいので、お話の展開自体は創作になります。また、キャラクターに関してもモデルはいますが、大部分は創作です。それから、お話の最後に「赤ちゃんが入った写真に差し替えになった」というのも創作で、「年男年女たちの抱負」のページを修正しているときに、「そうなる可能性もあるよなあ」と妄想したことがこのお話の元になっています(笑)。
ただ、社内報で社員さんのお子さんが生まれたことを紹介するコーナーで、赤ちゃんの写真が校了直前に滑り込んでくることは多々あったので、その部分に関してはノンフィクションになると思います。
ーー作中の「そういうことならやむなし!」のセリフが印象的です。実際に中村環さんも当時は「やむなし!」という心情でしたか?
いつも「やむなし!」と思うことばかりでした(笑)。外部から仕事を受注するクライアントワーク中心の会社に勤めていたので、「注文をやむなく聞くしかない状態だったのかなあ」と。「企業の社内デザイナーとして働くインハウスの仕事では、こんなことないのかもな」と思っていたんですが、「インハウスはもっとひどいですよ」というリプをTwitterでいただいて、デザイナーさんは皆そんな感じなんだなあと思いました。

ーー今回のマンガはほっこりする内容ですが、クライアントのデザイナーへの無理な注文は、しばしば問題となります。お互いが気持ちよく仕事をするためには、どうしたら良いでしょう? 経験者としてのご意見をお聞かせ下さい。
現場でよく悲鳴が上がっていたのは、ご依頼を下さる企業の担当者さんとは合意が取れてフィックスしているのに、その担当者さんの上司にお目通しいただいたときに、「まったく違うものに作り直すように」と修正が来る、というものです。その上司の方が気分屋だと、もうどうしようもないのですが、多くはクライアント側の確認のタイミングの問題、というのが挙げられると思います。
デザインができ上がった後に上司の方に確認していただくという承認ルートだとこういうことが起きやすいので、上司の方には手描きラフなどの「デザインに入る前の段階」にも1度チェックをいただく、ということが必要かと思います。
そのためには、自社の営業が、お客様のワークフローやタイミングをあらかじめ把握して、こちらから適切な確認タイミングを提案していくと良いです。そのような、先手を打つことで「デザインのどんでん返しを防ぐ」という取り組みを、当時いた会社では全社的にやっていた覚えがあります。
ーー作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。
作中に登場するデザイナーの「林田」というキャラは、このひとつ前に描いた作品『深夜のヒーロー』というマンガで登場しているのですが、Twitterのリプで「林田さんだ!」「また林田さんを描いてください!」というふうにおっしゃってくださる方が多くいて、とても印象に残りました。
現在は、読者の皆さんに覚えていてもらえるようなキャラクターを作ることが課題で、取り組んでいる最中なのです。キャラクターを覚えていてくれる、また、林田の活躍を心待ちにしていてくれているという反応がいただけて「少しでも課題をクリアできたのかも」と思うことができ、とてもうれしかったです。
ーー精力的にマンガを発表なさっていますが、その原動力となっているものは何ですか?
読者の方やマンガ仲間からの、ご感想や応援です。私自身、気持ちがあまり強くないですし、「自分にはマンガでご飯を食べていく才能がないだろう」と、中学生で漫画家の夢を1度捨てたことがあるくらいには、マンガに対する自信がありません。
自分がお客様からお金をいただけるほどのマンガが描けているのか、商業誌の掲載にかなうような高いレベルのマンガが描けるのか、マンガを描いていて家族を養うことができるのか、と今も不安でいっぱいのなかで描いているので、きっと明日筆を折っていてもおかしくない状態です。
ですが、日々ご感想をいただいたり、いつもいいねを押してくださる方がいたり、「漫画家をあきらめないで!」というメッセージをいただいたりして、やっと自分のマンガにささやかながらも価値があるというのを見出すことができます。「また明日も描こう!」という気持ちをつなぐことができています。
皆さまには本当に感謝しかありません。いつもありがとうございます。新作のマンガを描いて、お返ししていけたらと思っています。
●中村環さん 前回のインタビュー
(マグミクス編集部)















