作者も殺すつもりだった? しぶとく「死を回避」した人気キャラたち
作者も驚くほどの生命力!? 史実の壁すら突破したキャラ

●本部以蔵『刃牙道』
格闘マンガ「刃牙」シリーズの第4部『刃牙道』では、クローン技術と降霊術で蘇った宮本武蔵と、現代の格闘家たちとの闘いが描かれます。そして、同作では人気キャラの烈海王が武蔵に斬られて死んだことが、大きな話題になりました。しかし、もともと武蔵に斬られて死ぬ予定だったのは、実戦柔術家・本部以蔵だったことが、ムック本『バキ大解剖 激突!地上最強編』での作者・板垣恵介先生のインタビューで語られています。
第1部『グラップラー刃牙』の「最大トーナメント」では1回戦敗退の本部ですが、武器を用いた戦闘に秀でており、第2部『バキ』では最凶死刑囚・柳龍光を圧倒する場面もありました。そして、剣および武芸百般を身につけた達人である武蔵との戦いのなかで、他の闘技者たちを守る使命に燃える実戦武術家として再登場します。特に、作中最強の存在である範馬勇次郎を前にして、「安心していいんだ」「君らの身は俺が守護(まも)る」と宣言した場面は、涙を流すほど怒り狂う勇次郎の反応含め、インパクト絶大でした。
板垣先生は、本部が「仲間たちを守護る」と言い出す展開を担当編集に話したところ、大いにウケたと振り返っています。そして、第3部『範馬刃牙』の「ピクル編」での愚地克己のように、本部を活躍させることが決定。実際に勇次郎を武蔵から守護り、その後は地下闘技場で武蔵相手に勝利をおさめる場面も描かれ、晴れて斬殺される運命を回避しました。そして、そんな本部の代わりに斬られることになったのが、拳雄・烈海王だったのです。
本部の代わりに烈海王が退場するのは、「もったいなさ」も感じますが、板垣先生は武蔵ほどのビッグネームを出演させる以上、斬られ役にもインパクトが必要だったと語っています。実際、本部の「守護る」も、烈海王の死も、とても盛り上がり話題になりました。その後、烈海王はスピンオフの『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』が人気になり、本部は強キャラのひとりとして存在感を発揮しています。両者にとって、プラスになる判断だったと言えるでしょう。
●壁『キングダム』
史実を元にしているマンガでも、死の運命を回避したキャラがいます。中国の春秋戦国時代を舞台にした歴史バトルマンガ『キングダム』に登場する壁は、「王弟謀反編」で死ぬ予定だったことが、単行本第35巻のあとがきで明かされています。
物語序盤から登場する壁は、秦王・政の王宮奪還に貢献し、その後は大将軍を目指すことを決意しました。実直な性格で義にも厚い優秀な男・壁は、いくつもの戦争に参加し、実際に将軍にまで成り上がっており、「王弟謀反編」では三万の反乱鎮圧軍の総大将を務めています。
壁が死ぬ予定だった理由、それは『キングダム』の元になっている歴史書『史記』内に「将軍壁死」という記述があったからです。作者の原泰久先生は、これを「壁という名の将軍が死んだ」という意味だと解釈していました。壁はこの「将軍壁死」という記述通りの展開のために生まれ、将軍へと出世していったキャラだったのです。
しかし、連載中に「壁死」が「城壁内で戦死」という意味にも取れることが分かり、壁は「王弟謀反編」で死ぬはずの予定を回避しました。歴史書の別解釈という、『キングダム』らしい理由で生き延びた壁に、原先生は「壁の生命力、恐るべし」と述べています。史実の壁を突破した壁はその後、趙国・ギョウ攻略戦の「リョウ陽攻防戦」で、敵大将である犬戎王・ロゾに止めを刺すという大金星も挙げました。
いずれもまだ連載が続いている作品で、今回紹介したキャラたちはそれぞれ重要なポジションにいます。今後の活躍にも注目が集まります。
(SU_BU)