ゲーム開発者が憂鬱な「クリスマス商戦」 休めないのは「年末」だけじゃなかった?
クリスマスを含む年末商戦は、ゲーム業界にとっても稼ぎ時です。しかしこの時期発売のゲームの開発者は、開発期間中、そして発売後も憂鬱を抱えています。それはなぜでしょうか? ここ20年ほどの据え置きゲーム機向けのゲームに話題を絞って、ひもといていきます。
ゲームは「完成したらすぐ発売」できるものではない

2022年も残すところあとわずかとなりました。間もなくクリスマスですね! 商売をやっている人にとっては言うまでもなく稼ぎ時で、ゲームも例外ではありません(情緒がなくてすみません……)。しかしこの時期にゲームが発売ということになると、その開発者たちは憂鬱になります。この理由についてお話しましょう。
※今回の話題は、ここ20年ほどのNintendo SwichやPlay Station 5などの据え置きゲーム機向けのゲームに絞りたいと思います。
大作を除く多くのゲームは、1年程度で開発・発売されます。クリスマス発売なら年始にスタートです。もっとも筆者の感覚的には、前年の11月頃から企画を動かし始め、正式にプロジェクトとして動くのが年始……という方がより正確な気がしますが、とにかくザックリ言って1月スタートだとして開発工程を逆算してみましょう。
まず、ゲームは完成してすぐ店頭に並ぶわけではありません。ディスクやパッケージを製造する時間が必要ですし、テレビCMをはじめ本格的な宣伝もします。この期間として最低2か月は見ておく必要があるので、実はゲームの完成(マスターアップ)は10月下旬ごろになるのです。
完成の最終工程は任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)などの各プラットフォームで行われる製品審査で、これが通らないと発売できません。当然作りかけのものは審査に出せないのですが、発売時期が重なると申請が混み合い、申し込みが1日ずれただけで連絡が想定外に遅れることがあり、その挙げ句に問題があって再提出となったら大変です(割とあります)。そのため10月上旬にはチェックに出しておきたい……となると、実質のゲーム完成は9月末ごろになります。
余談ですが、(いつとは言いませんが)その昔、SIEの前身である当時のソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)からこの審査基準を大幅に引き下げるといった意味の通達がありました。
それまではかなり厳しく内容をチェックされ、絶対に修正が必要な項目から順に、指摘がランク分けされて届いていたのですが、その精度・制度を悪用して「デバッグ」と呼ばれるミスチェックをSCEにやらせてしまおうと考える会社がそれなりにあったようなのです。本来それは開発各社が時間と費用をかけて行うもので、「SONYチェック(と我々は呼んでいました)」は、その上にある最終審査機関だったのですが……。それ以来、チェックはかなり甘くなりました。それを境に発売されるゲームでバグが頻出したかどうかはわかりませんが、審査の返答はそこそこ早くなりました。
それでは話を戻します。