マグミクス | manga * anime * game

ラスボスは「資本主義の神」 漫画家・武井宏之が語る「シャーマンキング」の新章、『SKY』に込めた意味とは?

登場から25周年を迎えた『SHAMAN KING』は、最新作の「その先」が既に動き始めていることが作者・武井宏之先生の口から語られました。ロングインタビュー3回目では、新章『SKY』について更に深く掘り下げていきます。

「資本主義=悪」ではなく、そのなかで「どう生きるか」を描きたい

資本主義の神ヤービスを敵としつつも、たまおは彼が作った現代社会に大きな不満がないと言う。「少年マガジンエッジ」2023年8月号より (C)武井宏之/講談社
資本主義の神ヤービスを敵としつつも、たまおは彼が作った現代社会に大きな不満がないと言う。「少年マガジンエッジ」2023年8月号より (C)武井宏之/講談社

 この2023年で誕生25周年を迎えたバトルファンタジーマンガ『SHAMAN KING(シャーマンキング)』は、最新作となる『SHAMAN KING THE SUPER STAR』が講談社「少年マガジンエッジ」で連載中です。残念ながら「マガジンエッジ」は10月発売の11月号で休刊となりますが、その後は講談社のマンガアプリ「マガポケ」に移籍して連載が継続されること、さらに、同作に続く『SHAMAN KING』の「新章」が準備されていることが明らかになっています。

 『SHAMAN KING』誕生25周年を記念したロングインタビュー企画の3回目となる今回は、作者・武井宏之先生に新章『SKY』について、どこよりも早くそして詳しく語ってもらいました。また『SHAMAN KING』だけにとどまらず、武井先生のもの作り全体についても話が広がっていきます。『SHAMAN KING』編集担当のY田さんも引き続き同席します。

※武井先生へのロングインタビュー1回目はこちら
※武井先生へのロングインタビュー2回目はこちら

(取材・執筆:タシロハヤト/編集:マグミクス編集部)

『SHAMAN KING THE SUPER STAR』に続いて、「SHAMAN KING」シリーズの「新章」となる『SKY』がスタートすること、シャーマンキング同士の代理戦争「フラワー・オブ・メイズ」はそこで描かれること、そして『SKY』は1話のネームが準備中であることが明かされました。『SKY』にはエンタメをしっかりやりたいという武井先生の思いが強く込められているものの、扱うテーマをどう分かりやすく伝えるかに苦労しているようです。

* * *

――説教くささが出ないように、というのはなかなかハードルが高いですね! 今のところ資本主義を生み出したヤービスがラスボス的存在として描かれていますが、その存在を説明するだけで難しい言葉が出て来ますし、立ち向かうとなると、更にそういう言葉が重なりそうです。

武井 今まで自分のマンガは、なるべく直接表現を避けて、読んでる人が自分で想像して欲しいと思いながら描いてきたんだけど、今回ぱっと読める少年マンガを目指すにあたって、そうなるとどうしても、わかりやすくするために直接言わなきゃいけないところもいっぱい出てくる。

 だから別の言い方とかも考えたりしたけど、『レッドクリムゾン』にしても『マルコス』にしても、ヤービスは現代の資本主義を作ったって言っちゃってるんで、既に出てる表現は変えるわけにいかないんだよね(笑) ただ、気を付けようと思ってるのは、わかりやすさを優先しすぎて「だから」敵なんだとかっていう単純な描き方は絶対しないようにってこと。

――そう伝わってしまうと、「資本主義を100パーセント否定するのではないが、たまにおかしいことあるじゃん?」というテーマからズレてしまいますしね。

武井 うん。最近の『スーパースター』(7月発売「少年マガジンエッジ」8月号ダイ仏ゾーン編第21廻)でも、たまおに「いまの世の中がそんなに悪いと思ってない」って言わせてるし、それが全部駄目ってことになると、花は完全に自給自足しろってことになるし。言いたいのはそこじゃなくって、それ(資本主義)による支配構造とか、そこから生じる勝ち負けっていうのかな……そういうところなのよ。

――そうですね。資本主義イコール「お金」という考えだと、いろいろ矛盾が生まれます。単純に考えても、お金は太古の昔から存在し、私たちはそれを介した市場経済のなかで暮らしています。お金を持っている人が偉いというのもずっとある構造です。先生が言いたいのはそのことを否定するとかではなく、ヤービスがシャーマンキングになったとき、その仕組みに乗って世界を動かそうとする者たちが生まれ、それは世界中の人間を支配することと同じで、まんまとそれは達成されてしまい、いま我々は気付かずに彼らの支配下でもがいている……それをどうにかしたいということですよね?

武井 そうだね、うん。そういうなかで自分がどう生きるかとか、そういうことを伝えようと思ってる。今、ルール自体が変わりつつあることを含めてね。

Y田 ここでいよいよ『SHAMAN KING ZERO』の伏線が回収される……といいのですが(笑)

――おお、確かに! 『ZERO』の2巻ですよね? 「麻葉童子II」のラストでは、現シャーマンキングとなったハオが、ヤービスの作ったその世界をどうするか語ろうとして、語らずに終わっていますね! 今まで延び延びになっていたってことですね。

武井 それは決めてないからだよ! いやウソウソ!(笑)

――大丈夫です(笑)ちゃんと理解してますので!

【画像】武井宏之先生が息を吹き込んだ『ビックリメン』のキャラクターたち シールの力でバトル開始!(5枚)

画像ギャラリー

1 2 3

タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k