【シャーマンキング30周年への情熱(1)】今なお支持される作品、背景にある「価値観」の浸透
マンガ『シャーマンキング』が2018年に誕生から20周年を迎え、今なおその盛り上がりが続いています。スピンオフ作品や続編も登場し、原画展などのイベントも注目を集める同作の魅力について、さまざまな視点で掘り下げていく新連載です。
単なるバトルもので終わらない、「異色」の少年マンガ

マンガ『シャーマンキング』が2018年に誕生から20周年を迎え、今なおその盛り上がりが続いています。新型肺炎の影響で各地での開催が中止や延期となってしまいましたが、2019年から全国各地で開催されている原画展「シャーマンキング展」にも、多くの来場者が詰めかけています。2020年は同シリーズをさらに盛り上げる企画が複数進行しています。
ご存じない方のために説明すると、『シャーマンキング』は1998年に連載がスタートした武井宏之氏のマンガ作品で、2001年にはTVアニメ化もされています。2004年に本編が完結した後も、前日譚や続編、スピンオフ作品が世に送り出され、現在も継続中というビッグタイトルなのです。
「シャーマン」というのは、霊魂と対話したり、彼らを使役したりできる存在。日本でいえば巫女や陰陽師、恐山のイタコなどもシャーマンです。作中でのシャーマンは幽霊や精霊を「持霊(もちれい)」として行動をともにしており、彼らと縁の深い物品(媒介)に霊を降ろすことによって、物理世界に影響を及ぼせるようにします。
主人公・麻倉葉(あさくら よう)の場合、600年前の武士・阿弥陀丸(あみだまる)が持霊で、生前の愛刀・春雨(はるさめ)に彼を降ろして戦うのですが――。
戦う……? いったい何と?
実は、500年に一度「シャーマンファイト」という試合が世界のどこかで開かれるのです。この優勝者をシャーマンキングと呼び、全知全能の「精霊の王」を持霊にして、究極の存在……つまり神になれるといわれているのです。世界中のシャーマンたちがその立場を目指して戦い、代々陰陽師の家系に生まれた葉も例外ではありません。
本作はこのように、分類上はバトルマンガですが、主人公が戦いを望んでおらず、勝敗にもこだわらず、何事も「なんとかなる」と考えているユルい性格というのが大きな特徴です。そのため、迫力あるバトルシーンは山ほどあるにもかかわらず、作品全体としてあまり重視されていません。
こうした構造について、作者である武井氏自身も「本作はマイノリティに属している」と述べており、異色であることを認めています。しかし、本編が長期連載であったことは事実で、しかも今また脚光を浴びているというのは、どういうことなのでしょうか?