ゲームブックは死なず! ソシャゲ氾濫の今、マニアが語るその「本質」とは
専用iOS用アプリ、人気も2015年3月終了
2000年代に入ると過去の人気作品の復刻や、わずかながらも新作が発表されるように。しかしその盛り上がりも低調に終わります。
「紙媒体では創土社が復刻版を発売しました。オンラインサービス系では、携帯アプリサービスの『ゲームブックラボR』、iOS用アプリ『iGameBook』などが挙げられます。ゲームブックラボRはスマホが出る前に携帯アプリがリリースされていました。
iGameBookは往年の名作ゲームブックを楽しめました。『グレイルクエスト』シリーズや『送り雛は瑠璃色の』などがリリースされ、かなりの人気を博しており、Facebookの専用ページは13.5万いいね!を獲得していました。ところが2015年3月で終了となってしまったのです」(代々木さん)

その理由について、代々木さんは次のように分析します。
「無料コンテンツが世に溢れていると、ゲームブック(紙媒体)の存在そのものが埋もれてしまいます。マンガやゲーム、SNS、YouTube、ヴォーカロイドなど、数えればきりがありません。
また紙媒体は『ページを繰る』『サイコロを転がす』『アドベンシャーシートに記入する』というUI(ユーザーインターフェース。ユーザにサービスを心地よく感じてもらう接点)が受け入れられにくいのではないでしょうか。スマホ片手にできるぐらいのUIではないと、若年層にはとりわけ受け入れられないでしょう」(同)
いつの時代も変化をリードするのは若者たちです。そのため、若者に夢中になってもらえるUIやコンテンツが提供される環境が必要で、復刻版はその需要に耐え得る作品が無かったからだとのことです。
「ゲームブック世代は同人誌を買い続ける」
代々木さんはゲームブックの現状と展望について、持論を展開します。
「現在、紙媒体では『脱出ゲームブック』シリーズ(リットーミュージック)が人気で、完成度が高く、内容も凝っています。メモしたり、ページをめくったりする作業も、煩わしさより、興味が勝るというまれな作りをしているため、これらのシリーズはリアル謎解きイベントが続く限り、しばらく続きます。
あとは、1980年代にゲームブックを楽しんだ世代が、同人誌(紙媒体)を買うことが継続するでしょう。世界を見まわすと、デジタル版ゲームブックの『LifeLine』シリーズや、アメリカのゲームブックアプリ制作メーカー『3MinutesGames』のスマホアプリが人気です。今後はこのようなスマホアプリ版が人気になるでしょう」(代々木さん)

前出のとおり、ゲームブックを「読者が選択し続ける物語」と定義している代々木さん。その未来はこの認識にあるといいます。
「ゲームブックはさまざまな媒体やコンテンツと相性が良く、『にゃんたんのゲームブック』(ポプラ社)、YouTubeドラマ『隙間男2』(劇団スカッシュ)、世界初の視聴者参加型映画『Late Shift』など、マンガ版や動画版がすでに存在しています。さらには、1997年に発売した、セガサターンのインタラクティブサウンドドラマ『リアルサウンド ~風のリグレット~』のような、音だけでゲームが進むコンテンツも制作可能なはずです。目が不自由な人と一緒にコンテンツを共有できます。RPGや謎解き、サバイバルのゲームブックは既にあるため、一個人が興味のある分野でのゲームブックを作ることもできますね。
プロモーションとしても、芸術作品としても、とてつもなく夢中になれる趣味としてもゲームブックは大きなポテンシャルがあります。ぜひ皆さんにゲームブックを楽しんでほしいですね」