ジャニーズの「メディア支配」は崩壊 世界に通用する番組づくりで「声優」は浮上するか?
「グローバル市場」に目を向ければ、「声優」が選択肢に?
TBSの映画事業を担当する辻本珠子プロデューサーは「国内市場だけで回収するビジネスモデルに限界を感じ始め、グローバル展開しないとまずいという雰囲気がある」とイベントで語っていました(Branc主催「国際プロデューサーの視点から:日本実写作品のグローバル展望」)。映画に限らず、これはあらゆるエンタメ業界全般にあてはまると考えられるでしょう。
音楽産業においては、Kポップの成功事例を参照した国内グループも登場するようになってきました。映像コンテンツではなんといっても、アニメがグローバル市場を開拓し続けており、人気アニメに出演する声優も、世界のアニメファンに徐々に知られるようになってきています。
今後、日本のタレントもグローバル市場での人気が重視されるようになるでしょう。テレビ番組でも、出演者の起用に国内でのタレントパワーだけでなく、グローバルでの人気を考慮するようになることが予想されます。
その時、グローバルに知られる声優を番組に起用することは、選択肢のひとつとして十分に考えられると筆者は思います。
『ドラゴンボール』シリーズのベジータ役でおなじみの堀川りょうさんは、「声優の新たな活躍の場として注目すべきは海外」とコラムに綴っています(同氏が学院長をつとめる「インターナショナル・メディア学院」公式サイト)。
アメリカだけでアニメコンベンションは400近くあるといわれており、それがさらに他国でもあるわけで、色々なところから日本の声優はゲストに呼ばれていますし、ネットでも声優の切り抜き動画などは(違法も合法も含めてですが)国際的に流通しています。近年、音楽産業ではアニソンによって海外で人気を獲得するアーティストが生まれていますが、声優も同様に他業種のタレントよりも海外に認知されやすいアドバンテージを持っていると言えるでしょう。
そうして声優がグローバル人気を獲得すれば、テレビ局側が必要とする時代が来ないとは限りません。テレビ局がドメスティック市場中心に展開していくこと自体を見直すのだとすれば、声優を番組に起用することは有力な選択肢のひとつになるでしょう。
バラエティやトーク番組は、フィクションのアニメやドラマと比べて海外展開するのが難しく、日本の放送コンテンツの海外輸出の80%以上はアニメで、バラエティ番組の海外輸出は全体の4~5%くらいのシェアしかありません。逆に言えば「伸びしろ」があるということです(総務省情報流通行政局「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析(2020年度)」)。
国内の視聴率による広告ビジネス、いわゆる「放送収入」は近年、右肩下がりです。その下げ幅を放送外収入で埋めないといけないのが今のテレビ局事情なのですが、その放送外収入でグローバル市場から利益をあげられるかどうかがテレビ局にとっての課題となっています。アニメにテレビ局が力を入れ始めているのはこれが理由で、TBSなどは実写ドラマも輸出できるように動いています。
ジャニーズ問題でスポンサー離れが加速すれば、放送収入の下落はさらに早まるでしょうから、テレビ局は急いで業態変化をしないといけない状況にあるのです。
「声優のバラエティ出演」は良いことか? 業界の対応も課題に
近年、バラエティ番組のグローバル展開の事例としては、Amazon Prime Videoで全世界独占配信された『風雲!たけし城』がありますが、この番組の司会に起用されたのが、声優として実際にバラエティ番組でも活躍する木村昴氏でした。起用理由は公になっていませんが、グローバルに展開する番組コンテンツに声優が起用された実例として、注目すべきだと個人的に思います。
もちろん、バラエティの仕事が増えることが声優にとって幸せかどうかは、議論の余地があります。声優の本分は演技ですから、演技以外の仕事で目立つことが増えること自体、好ましくないと考える人もいるでしょう。ただ、活躍の選択肢が広がり、自分でやりたい仕事を選べる状況になるのであれば、悪いことばかりではないでしょう。
一方、声優自体の地位向上のためにはネームバリューを上げていく、活躍の場を広げていくことも必要になるでしょう。少なくとも今後、テレビ局はグローバルに知名度あるタレントを必要とする時代になるはずです。アニメ人気を背景にした声優の起用は有力な選択肢となる可能性は充分にあり、それは今後の声優自身、あるいは声優業界が国内だけでなく、グローバルにタレントを育成していくつもりがあるかどうかにもかかっているでしょう。
(杉本穂高)









