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アニメ映画『リメンバー・ミー』は、家族にかけられた「呪い」を解く感動作

現代人を悩ませる、さまざまな「呪い」

『リメンバー・ミー』主人公のミゲルは、「あの世」で自分のアイデンティティを見つける (C)2018 Disney/Pixar
『リメンバー・ミー』主人公のミゲルは、「あの世」で自分のアイデンティティを見つける (C)2018 Disney/Pixar

「呪い」と聞くと中世のおどろおどろしい呪術を思い浮かべがちですが、現代社会でも呪いを気にする人は少なくないと思います。お正月やお盆に実家へ帰省する際に、家族や親戚から「就職は決めた?」「結婚はしないの?」「子どもはどうするの?」と尋ねられるのを快く感じられない人もいるのではないでしょうか。

 家族や親戚は心配して尋ねているのでしょうが、尋ねられた側にとっては「就職」「結婚」「出産」などのおめでたい言葉が「呪い」として重くのしかかることになります。幸せを願う家族の「祈り」が、逆に当人にとっては「呪い」となってしまうのです。家庭によっては、ほかにも大小さまざまな「呪い」があるかもしれません。

「ミュージシャンになる」という夢を家族に反対されたミゲルは、あの世で初めて会ったご先祖さまと触れ合い、自分自身の隠されたアイデンティティを見つけることになります。歌うことの楽しさ、歌に込められた想いを知ったミゲルは、長年にわたって一家にかけられていた呪いを解くことができるのでしょうか。呪いからの解放は、『リメンバー・ミー』の裏テーマといえるでしょう。

クリエイターの人生観が投影された「死後の世界」

『ティム・バートンのコープスブライド』DVD(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)
『ティム・バートンのコープスブライド』DVD(ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント)

 映画の世界では、これまでにもいろんな作品で「あの世」が描かれてきました。3Dアニメ『ティム・バートンのコープスブライド』(2005年)の主人公は、現実世界よりも死者の世界に居心地のよさを感じます。オタク少年として孤独な青春を送ったティム・バートン監督らしい、ユーモラスな世界観です。

 クリント・イーストウッド監督が撮った『ヒア アフター』(2010年)は、「臨死体験」を真面目に描いた異色作です。津波に襲われて九死に一生を得た女性キャスター、死者の声が聞こえる霊能者、双子の兄を失った喪失感に悩む少年が、それぞれ不思議な運命に導かれます。臨死体験者たちは、「明るい光に包まれた」「懐かしい人たちに再会した」など共通した記憶を持っているそうです。本当にあの世(ヒア アフター)はあるのか、考えてみたくなります。

 最後に山崎貴監督が撮った『DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年)を紹介しましょう。西岸良平氏のロングセラーコミック『鎌倉ものがたり』を実写映画化したもので、鎌倉で暮らすミステリー作家(堺雅人)が黄泉の国に旅立った妻(高畑充希)を連れ戻そうとするファンタジーになっています。山崎監督は黄泉の国を恐ろしい世界としては描かず、初めて訪れるのにどこか懐かしさを感じさせる空間にしています。

「死ぬ瞬間に、その人が何を思っているかによって死後の世界は変わってくるんじゃないかと僕は思うんです。『良かった、満足した、人生をやり切った』と幸せな気持ちで最期を過ごせば、そういう世界に行くんじゃないかと。逆にそれまでの人生で隠し事が多く、自分の良心に咎めるようなことをいっぱいしていると、傷ついた魂とともに暗い世界に行くことになるんじゃないかな」と、山崎監督は『DESTINY』劇場公開時のインタビューで語っています。

「あの世」の描写には、クリエイターたちの人生観が投影されており、とても興味深いものがあります。人間は誰しも「死」から逃れることはできませんが、今回『リメンバー・ミー』とともに紹介した映画は、それぞれ「死」という呪縛や運命にどう向き合うかのヒントが隠されているといえるかもしれません。

(長野辰次)

【画像】独特すぎる! 『リメンバー・ミー』の明るい「死者の世界」(10枚)

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