今夜の金ロー『塔の上のラプンツェル』 子供の自立心を奪う「毒親」の怖さ
大人になっても、心に残り続けるトラウマ

モンスターペアレントとも呼ばれる「毒親」は、子供に「しつけ」と称して暴力を振るう、食事をさせないなどの虐待行為を繰り返します。悲しいことに、虐待を受けた子供たちは、自分に非があると思い込んでしまいます。また、子供に過干渉したり、親の価値観を押し付けたりすることも毒親の特徴に挙げられます。
さらに毒親が恐ろしいのは、大人になって実家から離れて暮らすようになっても、子供の頃の体験が強く残ってしまうことです。結婚して自分が親の立場になると、自分も子供を平気で傷つけてしまうのではないかという恐怖心を抱いてしまいます。いつまでも毒親の影響から、逃れることができません。「毒親」ゴーテルはとても厄介な存在です。
また、米国では幼児を誘拐し、監禁する事件が多く、クリント・イーストウッドが監督した『チェンジリング』(2008年)、ブリー・ラーソンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した『ルーム ROOM』(2015年)などのシリアスドラマが制作されています。監禁生活を送った男の子が実社会に適応できるようになるまでを、ユーモラスに描いた『ブリグズビー・ベア』(2017年)というユニークな作品もあります。どれもDVD化されているので、興味のある方はぜひご覧になってみてください。
願いごとを叶えてくれる「スカイランタン」
話題を『塔の上のラプンツェル』に戻しましょう。本作のなかで特に有名になったのは、数え切れないほど多くの灯りが夜空を舞う場面です。塔の上から眺め続けていたラプンツェルは、夜空に輝く灯りの秘密をようやく知ることになります。ヒロインの夢が叶う、とてもロマンチックなシーンです。
このシーンのモデルとなっているのは、タイのチェンマイなどで行なわれている「スカイランタン」と呼ばれるお祭りです。チェンマイでは毎年何万もの紙で作ったランタンが幻想的に夜空に浮かび、世界最大のランタン祭りと称されています。台湾で行なわれている「ランタン祭り」も有名です。台湾ではランタンに願いごとを記し、ランタンがうまく空に舞えば、その願いごとは叶うと言い伝えられているそうです。
新型コロナウイルスの影響で、福岡市を代表する夏祭りである「博多祇園山笠」をはじめ、日本各地の夏祭りは中止されることが次々と決まっています。「博多祇園山笠」などの夏祭りは、疫病や災厄退散などを祈願することを目的に始まったものが多いので、中止はとても残念に思います。外に出て、大勢の人たちと一緒に楽しむ夏祭りや花火大会の開催は当面は難しそうですが、せめて『塔の上のラプンツェル』のランタンが夜空を舞うシーンに、願いを込めたいと思います。早く、外の世界を自由に歩けますように。
(長野辰次)