『うしおととら』藤田和日郎とヤマハ開発者が語る、「白面の者」とバイク「R6」の誕生秘話
マンガの「読後感」は、モノづくりの道しるべにも?

ーー藤田先生は『うしおととら』で、バイクに乗る人物・秋葉流(あきばながれ)を登場させています。流は主人公・潮の兄貴分として彼らを助け、物語の終盤まで重要な役割を果たします。
藤田 バイクは男の憧れで、かっこいいものですからね。うしおと仲良くなる兄貴分はバイクに乗っていなきゃいけない。
また、「ギャップ」という考え方もありました。『うしおととら』では、現代のビルや乗り物などを背景に妖怪たちが活躍するというギャップで「妖怪もの」の新しさを表現していましたが、「現代」の象徴であるバイクに僧侶が乗って、さらに錫杖を持って戦うというのも新鮮で……もともとバイクが好きだったこともあって、描いていて楽しかったですね。

ーー藤田さんと平野さんの活動分野は違いますが、ものづくりや作品づくりについて、おふたりの間に相通ずるものがあるとしたら、どんなところでしょうか?
平野 昨年まで全国各地で開催された、画業30周年の「藤田和日郎原画展」のパンフレットに、「読後感からスタートしてストーリーができていく……」という先生の言葉が書かれていて、読んだ時に「目からうろこ」だったんです。
私たちはお客さんがバイク乗っている時のことを一生懸命想像して商品コンセプトを作っていくんですが、「読後感」、バイクでいえば乗り終わったあとに残る感覚というところまで想像していけば、お客様に「経験」や「成長」といった価値まで提供できるんじゃないかと思いました。
例えば、今はハイテク化で乗り手の負担を軽減する方向でバイクを作っていますが、バイクを降りたあとの心地よい疲労感や幸福感を考えて、「少し苦労する部分をあえて残す」という考えもあっていいんじゃないかと。
藤田 マンガでいう「読後感」というのは、灯台の明かりみたいなものなんです。漫画家というのは、絵を描くのが誰よりも好きな人間の集まりなんだけど、何を描けばいいかわからなくなる瞬間もある。そんな時、読んだ人に何を感じて欲しいかーー例えば恐怖だったり感動だったりーーを決めておくことで、進むべき道を見失わないようにするという意味なんです。
何かを作る時に、受け取る人のことを一生懸命考える。平野さんたちが「このバイク好きになってもらいたいなぁ」と思うのと、僕が「読者にこういう風に感じてもらいたいな」と思うところは共通なんだなぁと思います。
平野 藤田先生が絵に注ぎ込む熱量は本当に凄いです。R6の開発中に『うしおととら』全巻を読み直したんですが、「小さな単行本からこれほどのエネルギーをもらえるのか」と、胸が熱くなりました。
藤田 バイクの作り手としてのお話をたくさん聞けて、本当に嬉しかった。これからもお仕事を頑張って下さい。いつかまた、マンガのなかでバイクを描いてみたい。その時はぜひこの「R6」を描きたいですね。
(取材・構成:マグミクス編集部)
●藤田和日郎さんの最新作『双亡亭壊すべし』は、「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中。既刊16巻。『うしおととら』(全33巻)のうち、1巻~5巻がマンガアプリ「サンデーうぇぶり」にて、2020年5月14日まで無料公開中です。
●ヤマハ「YZF-R6」は、日本国内ではプレストコーポレーションにより輸入販売されています。現行モデルのボディカラーはブルー、ブラック、オレンジの3種類となります。
※本記事は2020年3月16日に実施した取材をもとに制作しています。










