『Zガンダム』に登場した「MSV」機体たち　“大人の事情”がデザインに反映されていた？

ガンダム継続の道を模索した「MSV」とは？

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』や『機動戦士Gundam GQuuuuuuX（ジークアクス）』と発表される度に大きな話題を振り撒くガンダムシリーズ。いまでこそ、あらゆるジャンルを席捲しており、ジャンルとしての「ガンダム」が絶えることはありません。

　しかし、かつて『機動戦士ガンダム』の劇場版三部作を経て、『機動戦士Zガンダム』が実現するまでには、シリーズを続けるための道が模索されていました。

　それが「MSV」（モビルスーツ・バリエーション）です。プラモデル化を前提に、一年戦争時、『機動戦士ガンダム』の作中では描かれなかった、戦地などで活躍したMSを新たにデザイン＆設定し、書籍を中心に展開。フルアーマーガンダムやザクIIなどが人気を博し、ジョニー・ライデン少佐、シン・マツナガ大尉などザクIIで活躍するジオンのエースパイロットも登場しました。

　ちなみにザクIIというと、現在は量産型ザクを指しますが、この頃はMS-06R（いまでいう高機動型ザクII）がザクIIとされており、プラモデルにもザクIIと表示されていました。

●メーカーサイドの思惑で『Zガンダム』にMSVが登場

　その後、『Zガンダム』の放送が決まり、「MSV」（後続企画「MS-X」も含む）の展開は終了しましたが、『Z』の第10話「再会」～第18話「とらわれたミライ」にかけて、多数のMSVが登場しました。

『Z』では『ガンダム』から7年の歳月を経ているため、いずれもコクピットはリニアシートに改修されているとの設定で、第10話「再会」ではザク強行偵察型、第11話「大気圏突入」ではザクキャノン、第14話「アムロ再び」ではロザミア・バダム率いる部隊のアクトザク、第18話ではマリン・ハイザック（※ザク・マリンタイプ）が登場しました。

　なかでも1クール目の山場となる第12話「ジャブローの嵐」では、ジム・スナイパーカスタム、ジム・キャノン、ザクタンク、グフ飛行試験型、ガンダンクII、ガンキャノン重装型と、多数のMSVがジャブローの防衛戦で登場しました。

　しかし、この登場には裏があり、要はパッケージの差し替えと成形色を変えた仕様変更で、お手軽にプラモデルを発売できるというメーカーサイドの思惑に絡んだものだったのです。

　一方、武装などは、『Z』登場時に準拠しており、たとえば『Z』仕様のジム・キャノンのプラモデルのパッケージイラストでは、ジムII（orネオ）のビームライフルを手にして描かれているものの、キットの金型はそのままなのでビームスプレーガンしか付属していません。

　従って『Z』仕様を再現するには、別途、ジムIIもしくはネモのプラモを購入しなければならなかったのです。劇中、ジャイアント・バズで武装していたグフ飛行試験型もまた同様で、やはりリック・ドムや同じMSVのプロトタイプドムもしくは局地戦闘型ドムから調達する必要がありました。

　さらに『Z』に登場したMSVは、未プラモデル化のものまで登場していました。ガンキャノン重装型は、当時、ガンキャノンIIとガンキャノンをニコイチ改造で製作するモデラーもいたそうですが、腕に覚えのあるモデラーならともかく、ハードルは高かったでしょう。アクトザクやガンダンクIIに至っては、MSV（MS-X）としてデザイン画が起こされたのみでプラモデル化はされておらず、フルスクラッチするしか手がありませんでした。

　また、これらのMSVは登場こそしたものの、ほとんどがモブ扱いに過ぎず、ザクキャノンに至っては格納庫に置かれているだけで活躍シーンが一切描かれないなど、扱い自体も持て余し気味の感がありました。果たして実際に売れたのかどうかも疑問が残るところです。

　そんな少々中途半端なMSたちですが、現在は完成品のROBOT魂シリーズで「ジャブロー防衛隊仕様」として商品化が続々と実現しており、隔世の感があります。

　なお、この仕様変更路線は、次回作の『機動戦士ガンダムZZ』でも継承され、ディザート・ザク、アイザック、ドワッジ、リゲルグ、ザク・マリナー、ガズアル／ガズエルなどが登場しました。今度は旧キットをベースに新規パーツを付けることで、従来のMSの派生機を新たに仕立てるといった工夫がなされていました。