没になった「Zガンダム案」だった? 異形の巨大MA「サイコ・ガンダム」が生まれたワケ
『機動戦士Zガンダム』に登場した巨大モビルアーマー「サイコ・ガンダム」。その特異な形状と変形ギミックには実はおもちゃメーカーの意向が隠されていました。
『Z』の世界において特異な存在

『機動戦士Zガンダム』に登場した巨大なガンダム型モビルアーマー「サイコ・ガンダム」。その特異な存在感と不思議なデザイン性の背景には、実はおもちゃメーカーの意向が隠されていました。なぜこのような機体が登場することになったのか、その秘密に迫ります。
『機動戦士Zガンダム』第17話「ホンコン・シティ」で初登場したサイコ・ガンダムは、箱型のモビルフォートレス形態から巨大なガンダム型MSへと変形する特異な存在でした。前作のビグ・ザムのような巨大MAはありましたが、ガンダムに変形する設定は当時の視聴者に衝撃を与えることになりました。
その圧倒的な大きさと重量感は、輸送機スードリにも搭載できないほどで、香港の街並みを破壊しながら進む様子も迫力満点です。カミーユやアムロも「なんだっ!?」「あんな巨大なものが歩けるのか!?」と驚愕しました。
特に驚くべきは、その姿が明らかに初代ガンダムを模したデザインであること。
この巨大ガンダムの登場は、後の「ガンダムVSガンダム」という構図の先駆けとなり、劇中では主人公機に立ちはだかる強大な敵として描かれたのです。初代を模した巨大なガンダムが、最新のガンダムMK-IIと戦う図式にもひねりが感じられ、現在では当たり前になった「ガンダムVSガンダム」の鏑矢(かぶらや)としても特筆されるものがありました。
●バンダイがデザインを手がけたガンダム
さて、なぜガンダムを模した巨大MAが唐突に登場したのでしょうか? 本作は敵対するエゥーゴ(&カラバ)、ティターンズ(&地球連邦軍)の双方が同じMSを運用しているなど、いささかややこしい世界観で、主役MSのガンダムMK-IIももともとはティターンズが開発した機体でしたが、それにしても違和感のぬぐえない登場です。
またMSの飛行には、ベースジャバーのようなサブフライトシステムが運用されているリアルな世界観にあって、箱型のモビルフォートレス形態が悠然と飛行する描写もかなりトンデモな印象を受けます。
実はこのサイコ・ガンダムのデザインは、もともとは番組スポンサーのバンダイサイドが提出したZガンダムのデザイン案のひとつだったのです。
手がけたのはバンダイボーイズトイ事業部(当時)の村上克司さんで、バンダイがスポンサードした数々のロボットアニメのデザインで名を馳せた人物です。共同デザインも含めるとライディーン、ダルタニアス、ゴライオン、ゴールドライタン、鉄人28号(太陽の使者)、ダンクーガ、ゴッドマーズなど、枚挙に暇がありません。
また、戦隊もののロボットのデザインでも知られています。これらはいずれもおもちゃありきの販促番組ともいえる性質を帯びており、それゆえに「村上天皇」なる異名を持つに至りました。一方、『ガンダム』といえば、同じバンダイでも「ガンプラ」の呼称があるように、ホビー事業部が展開するプラモデルが主要商材であり、ちょっと珍しいケースのように思います。