80年代らしさ全開だったアニメ『よろしくメカドック』 最終回は原作とまったく違った!
車のチューンナップをテーマにして大ヒットした『よろしくメカドック』ですが、原作とアニメでは最終回がまったく異なっていました。
マニアックすぎる車知識満載の『メカドック』

「週刊少年ジャンプ」(集英社)で1982年に連載がスタートした『よろしくメカドック』(作:次原隆二)は、それまでのスーパーカーを扱ったマンガとは異なり、国産車のチューニングをテーマにした画期的な作品です。1984年にはアニメ化もされて大きな話題となりました。「チューニング」「チューンナップ」という言葉を本作で初めて知った人も多かったのではないでしょうか。
自動車の2級整備士の免許を持つ次原隆二先生らしく、マニアックな車の知識がふんだんに盛り込まれた作品です。セリカ、CR-X、シティなどの国産車の紹介はもとより、「Dr.風見のメカ教室」などを通じて車に関する専門用語やメカニズムを学んで、ディープな車好きになった人や車に関する仕事についた人を大勢生んでいます。
『よろしくメカドック』の原作マンガとアニメは、最終回が大きく異なっていました。原作では「東日本サーキット・グランプリ」でメカドックが優勝を果たした後、三戸コンツェルンの会長「三戸光国」が主催する「三戸マイレッジマラソン」に挑戦することになります。これは速さではなく、燃費の良さを競うレースです。メカドックは車体の重量がわずか20キロの燃費対策車を作り上げて出場しますが、三戸会長の「ミツクニ零」に惜敗します。
自動車部門に進出するため、精鋭を引き抜こうと考えていた三戸は、風見のライバル「那智渡」やライバルたちに声をかけて、同一車種・NEOを使用した「NEOチューン・レース」を開催します。あえて操作性アップのみでレースに挑んだ風見と那智は同着1位となります。那智はアメリカに渡り、風見はフェラーリからの誘いを断って、メカドックを続けることを選んでエンディングを迎えました。
一方、アニメは高速道路で3サーキットを結ぶ壮大な「東日本サーキット・グランプリ」で終わります。最終回「青春アクセルオン!」は、「チューナーの神様」の異名を持つ「ナベさん」こと「渡辺俊光」の失明に焦点があてられていました。
高速道路でデッドヒートを繰り広げる風見、那智、渡辺、渡辺の後継者「五十嵐充」の四者でしたが、渡辺は失明の影響で停車してしまいます。しかし、那智の叱咤によって渡辺も復活。四者はそのまま最終決戦の場である富士スピードウェイに突入します。
主題歌「よろしくチューニング」に乗せて、夕焼けに染まる富士スピードウェイでチェッカーフラッグを受けたのは風見でした。ライバルたちと固い握手を交わした後、メカドックの仲間たちと優勝パーティーを開いた風見は、「中村一路」と「野呂清」に見送られて、ピンク色のスバル360に乗って横浜港に出かけます(横浜が舞台になっているのはアニメオリジナル)。
横浜港の夜景を車から見ている風見の姿に、1980年代を象徴する人気イラストレーター・鈴木英人さんの作品のような架空のリボンが舞って終わりを迎えました。これは唐突な演出ではなく、エンディングでもアメリカ西海岸風の風景とともに、同様の演出が行われています。いかにも80年代らしいエンディングです。
アニメが終了したのは1985年3月末のことです。原作の連載も同時期に終了しています。当然ながら作業の多いアニメが先にストーリーを決めなければならず、原作の途中である「東日本サーキット・グランプリ」を最終回に選んだのは納得の選択といえるでしょう。
(大山くまお)