全世界で「蟹座」の評価が急上昇? 『聖闘士星矢 黄金魂』デスマスクの活躍
十二星座の話になると、よく話題になるのが『聖闘士星矢』の「黄金聖闘士」でしょうか。そして、いつも肩身の狭い思いをするのが「蟹座」だといわれています。しかし、蟹座が漢気を見せたことがありました。
スピンオフ作品などでも不遇? 「蟹座」の苦難の道

かつて日本中を熱狂させた名作『聖闘士星矢』の功績は数多くありますが、一方で「星座カースト」と呼ばれる、不条理な上下関係も各地で発生していました。これは、劇中に登場する「黄金聖闘士(ゴールドセイント)」の人気によるものでした。
簡単にいうと、十二星座のなかでも、キャラクターの活躍により明暗が分かれることになります。最強を争う「双子座」や「乙女座」と同じ星座を持つ人は良いのですが、活躍が少なかったり、良いところを見せられなかったりする黄金聖闘士と同じ星座の人間は、苦汁をなめることになりました。
特によく話題に上るのが「蟹座」でしょうか。それは蟹座を代表する「蟹座(キャンサー)のデスマスク」に問題があったからでした。デスマスクは物語の早い段階から登場しています。初登場時は黄金聖闘士の強者ぶりを見せる活躍で、青銅聖闘士(ブロンズセイント)との格の差を見せつける役割を果たしました。
しかし、その後がどうも評判が良くないことを連発します。黄金聖闘士でありながら悪事に加担、女子供でも容赦なく攻撃、その結果が自分の聖衣(クロス)に見捨てられてしまうという残念な結果を生んでしまいました。
さらに後の「ハーデス編」では「冥王ハーデス」の手下として復活し、「星矢」と戦うも徹底的に痛めつけられ、最後は役立たずとしてハーデス側から冥界に叩き落されてしまいます。もっとも後にこれはすべて芝居だったことがわかり、最終的には星矢たちを助けました。
この「ハーデス編」では以前よりもギャグ度が増してしまった点が、さらなる残念ポイントでしょうか。現在の単行本では修正されていますが、連載時には「のりピー語」まで使っていました。
こうしてデスマスクは、悪役どころか道化者となってしまいました。これらのことから蟹座は、「星座カースト」で一、二を争う底辺へと転がっていきました。さらに、リメイクされた劇場アニメ『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』でのデスマスクに関しても、評判があまり良くありません。
リメイクされたデスマスクは、隻眼でタトゥーのある原典以上にガラの悪いキャラクターとして登場しています。さらに謎のミュージカル調な演出もありました。その結果、ネタキャラという印象が強くなっています。
ちなみに、本作以外の外伝作品に登場する蟹座の黄金聖闘士の評価もあまりよくありません。
TVアニメ『聖闘士星矢Ω』に登場する「蟹座のシラー」は、美形の優男でデザイン的にはいいのですが、先代以上に卑劣なところを見せて退場しています。もっとも『Ω』の黄金聖闘士には残念なキャラクターが多いので、それほど目立って評価が低いわけでもありません。
原作者の車田正美先生自らが描いた続編マンガ『聖闘士星矢 NEXT DIMENSION 冥王神話』に登場する前聖戦では、「蟹座のデストール」というキャラクターが登場します。
このデストールはデザインから美形とは程遠く、コメディリリーフ的なキャラクターでした。もっとも、その見た目に反して確かな実力と洞察力を持っており、活躍も見せ場もありましたが、そのデザインから評価が難しいキャラクターです。
そういった蟹座の面目躍如となったのが、本伝の243年前の前聖戦を描いたマンガ『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』に登場する「蟹座のマニゴルド」と、その師匠で教皇である「セージ」の活躍でしょうか。この蟹座のふたりは作中でも屈指の名場面を生み、それまで辛酸をなめた蟹座の読者から絶賛されたといいます。
しかし、実は蟹座の黄金聖闘士の本家であるデスマスクが大いに株を上げた作品があることをご存じでしょうか。それは配信作品だった『聖闘士星矢 黄金魂 -soul of gold-』での活躍です。
デスマスクが漢気(おとこぎ)を見せた? 『黄金魂』での活躍

『黄金魂』は冥王ハーデスとの聖戦の最中、12人の黄金聖闘士が命と引き換えに「嘆きの壁」を破壊して消滅した直後のエピソードになります。その後、彼らはなぜか肉体を持ったまま「アスガルド」で復活しました。このアスガルドとは、TVアニメ版で星矢たちが戦った場所です。
復活した12人の黄金聖闘士は、それぞれの心に従って行動しました。それゆえバラバラに行動することになります。これに関してデスマスクは、黄金聖闘士の息の合わなさ加減は相変わらずと発言し、嘆きの壁の破壊に協力できたことを「奇跡」と評していました。
そのデスマスクは生き返ったことを幸いに昼間から酒と博打に明け暮れます。いつ終わるかわからない、このかりそめの命を存分におう歌しようとしました。その自堕落ぶりに「獅子座(レオ)のアイオリア」も呆れます。
もっとも、この行動にはデスマスクなりの理由もありました。いまだに蟹座の黄金聖衣に許されていないことが重くのしかかっていたようです。そのため寂しそうに蟹座の聖衣箱を見つめるという場面もありました。
そんなデスマスクですが、街にいた花売り少女「ヘレナ」と出会ったことで心境に変化がおとずれます。病弱ながら弟と妹のために働くヘレナに、デスマスクは名前も告げずに稼いだ金銭を分け与えるという行動に出ていました。ヘレナの生き方がデスマスクに微妙な変化を与えたのでしょう。
しかしヘレナはアスガルドの新たな指導者「アンドレアス」に騙され、その精気を吸収されてしまいます。この異変に気付いたデスマスクはヘレナを救出しようと駆けつけました。しかし、駆けつけた目の前でヘレナを救出した「魚座(ピスケス)のアフロディーテ」が命を落とします。
ここでデスマスクの怒りが爆発しました。それまで見放していた蟹座の黄金聖衣もその心意気に応え、デスマスクに装着されます。この時のセリフが「こんな俺とまた一緒に戦ってくれるっていうのかよ……キャンサー!」で、蟹座の溜飲(りゅういん)を一気に下げてくれる展開でした。
ところが相対したアンドレアスから「黄金聖闘士の中で一番弱い」「最低」だといわれてしまいます。アンドレアスは本作のラスボスでした。ここでデスマスクはそれを認めながらも小宇宙(コスモ)をたぎらせ、黄金聖衣を神聖衣(ゴッドクロス)へと変化させてアンドレアスを退けます。
しかし精気を吸収されたヘレナは力尽き、これを看取ったデスマスクは号泣しました。こうして、あらためて戦うことを決意したデスマスクは、決戦の場でヘレナの命を奪った直接の原因である「ニーズヘッグのファフナー」に勝負を挑みます。そしてデスマスクは積尸気冥界波でファフナーを黄泉比良坂へ落としました。
ところが黄泉比良坂を歩くヘレナの弟妹たちを盾にしたファフナーに苦戦を強いられます。ここでヘレナの弟妹たちに対して「お前たちの姉ちゃんは俺に気づかせてくれたんだ。こんな俺にも誰かを守ってやりたいって気持ちがあるんだってことを」というセリフがありました。デスマスクがそれまでと大きく変わったことがよくわかるセリフです。
ヘレナの弟妹たちからの声援に奮起したデスマスクは新必殺技「積尸気冥窮波」でファフナーを撃退しました。それは単に倒すのではなく黄泉比良坂に生き埋めにし、亡者たちに踏まれながら永久に苦しむという技です。
このデスマスクの活躍を見て、多くの蟹座の人が復権を喜んだのではないでしょうか。これからも外伝作品で蟹座の活躍はあるかもしれませんが、今のところ本家デスマスクの大活躍は『黄金魂』が一番良かったといえるかもしれません。
(加々美利治)



