『風、薫る』実際は大家直美のモチーフ・鈴木雅も「シングルマザー」だった 彼女にあった悲劇とは
『風、薫る』では、ついに主人公ふたりが出会いました。
それぞれ違う理由でシングルマザーになっていたふたり

2026年前期の連続テレビ小説『風、薫る』では、第2週9話でついにダブル主人公の「一ノ瀬りん(演:見上愛)」と「大家直美(演:上坂樹里)」が出会いました。ここまで、りんの父「信右衛門(演:北村一輝)」の死から、「奥田亀吉(演:三浦貴大)」との結婚、娘「環(演:宮島るか)」の出産、亀吉との離婚までが驚くほどのスピードで描かれてきましたが、一方の直美の物語はそこまで進んでいないように見えます。モチーフとなった日本初の「トレインドナース」のふたりは、実は両者ともにシングルマザーだったのですが、『風、薫る』では直美側の設定が大幅に変えられているようです。
『風、薫る』のモチーフとなった大関和(おおぜき・ちか)と鈴木雅は、ともに1858年に生まれた同い年の女性で、1887年1月に28歳で桜井女学校附属看護婦養成所の一期生として出会いました。同じシングルマザーとして支え合い、生涯の友となったふたりは、日本で初めて訓練を受けたトレインドナースとして看護婦の地位向上、医療の発展に貢献した人物として知られています。
黒羽藩(現:栃木県大田原市)の家老の娘として生まれた大関和は、18歳で父を流行り病で亡くした後に地元の地主の後妻になり、長男・六郎と長女・心を出産するも、夫が妾との関係を清算していなかったことが主な原因で離婚しました。変更されている部分もありますが、りんのこれまでの人生は和とある程度一致しています。
一方、生後まもなく親に捨てられ、キリスト教の牧師に育てられてきたという設定の直美は、モチーフの鈴木雅とはかなり違う生い立ちです。雅は駿河国沼津(静岡県沼津市)の武家の出身で、1876年から77年にかけて横浜のフェリス・セミナリー(現:フェリス女学院)で英語を学んでクリスチャンになっています。その後、雅は1878年に陸軍少佐の鈴木良光という男性と結婚し、娘・みつと息子・良一を出産しました。
しかし、幸せな生活は長く続きません。夫の良光は1877年の西南戦争で太ももに大けがを負っており、それがもととなった病気で1883年に他界してしまいます。苦しんで死んだ夫を助けられなかったことは、雅が看護の道に進む大きなきっかけとなったそうです。
りんが奥田家で酷い扱いを受ける一方で、直美側も夫を病気で失うという展開では、さすがに朝ドラの序盤としては暗すぎるので、こういった改変も仕方ないでしょう。ただ、直美は英語を話せる点や、キリスト教との接点などは雅と一致していますが、まだ看護を学ぶきっかけとなるような出来事は描かれていません。
りんはコレラにかかった父を救えなかった経験が看護婦を目指す大きな理由になりそうですが、特に夢もなくアメリカに行きたいという望みもなくなった直美は、これからどのようにナースの道に進むのでしょうか。今後に注目です。
※参考:『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社)、ムック『大関和 明治のナイチンゲールたち』(平凡社)
(マグミクス編集部 映画・ドラマ担当)
