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『ガンダム』登場は一度だけでも印象深い機体 視聴率の低さが「やられメカ」を生んだ

「ガンダム」シリーズの敵役といえば、何度もガンダムと戦うのが普通。しかし、一度限り、1話限りしか登場しなくても、印象的な活躍を見せた機体はいくつかあります。そんなMSたちに注目してみましょう。

量産型という概念で光るようになったワンオフ機

「1/550 MA-05 ビグロ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
「1/550 MA-05 ビグロ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 従来のロボットアニメでは敵ロボットは「やられメカ」などと言われた存在で、毎週新しいものが登場する1話かぎりのものでした。一方、「敵ロボットは量産されているもの」として毎週同じものが登場するようになった『機動戦士ガンダム』は、斬新かつリアルなメカ描写の作品として高評価を得ることになります。

 さらに敵のデザインを統一することで、新たに絵を描くことなく使い回して別の場面に見せる「バンク」もしやすく、作業工程の短縮、経費削減という作画面での効率化も可能になりました。富野由悠季監督はこのバンクには定評があり、前番組『無敵超人ザンボット3』や『無敵鋼人ダイターン3』では、戦闘シーンに出るメカを使い回して1話を作るということを行っています。

 こういったリアルな描写の数々で『ガンダム』はファンの評価が高く、アニメ雑誌にも多く取り上げられましたが、視聴率は低空飛行のまま。そのため、スポンサーの要望で1話かぎりの「やられメカ」を登場させるよう言われました。複雑な話作りではなく、単純なメカ戦にシフトするようにということです。

 このスポンサーからの要望で後半のドム以降のMS(モビルスーツ)は、ほぼ毎週新型が登場するようになりました。しかし、富野監督は簡単にスポンサーの言うことを聞く人ではありません。劇中で「強力なMSならば数はいらない、数機でも戦果をあげられる」というセリフで新しい方向性を示し、新たにMA(モビルアーマー)という存在までも登場させました。

 これにより『ガンダム』の世界観はさらなる広がりを示し、後の「ガンプラブーム」では1年以上も新作を発売できるだけの種類数を確保できたわけです。また、数が多く出る量産型と違って、こういった1回きりの機体は特別感が増し、強力な敵というイメージを視聴者に与えました。

 アムロを失神させて窮地に追い込んだ「ビグロ」、ユニークなデザインが印象的だった「ザクレロ」、マ・クベ専用機として活躍した「ギャン」など、一度の登場で絶大なインパクトを与え、それぞれコアなファンを生んでいます。それまでは「やられメカ」と軽視されていたはずの1話限りのメカたちが、量産型が普通に存在する世界では特別感のあるワンオフの機体となりました。

 本来なら、ひとつの作品でここまで急速に進歩できなかったメカ描写を、『ガンダム』では一作で成し遂げたのです。

【画像】人気なのに…1話しか登場していないのが意外なMS(5枚)

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