マグミクス | manga * anime * game

『ダイ大』と双璧をなしたドラクエマンガ『ロトの紋章』 あまりにも革新的だった理由

『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』が令和で大復活。『ダイ大』フィーバーが巻き起こっている今こそ、同時期の超傑作『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』の魅力を改めてお伝えしたいと思います。

日本でもっともリアルなドラクエマンガ『ロトの紋章』 注目すべきは「肉体」を持った勇者

原作・設定:川又千秋、脚本:小柳順治、作画:藤原カムイ『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』 完全版第1巻(スクウェア・エニックス)
原作・設定:川又千秋、脚本:小柳順治、作画:藤原カムイ『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』 完全版第1巻(スクウェア・エニックス)

 大復活を遂げたアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二、原作:三条陸、作画:稲田浩司)。まさか今となって再びダイやポップやマァムの活躍を見られるなんて。そんな感慨と共に当時の少年少女の熱気は日によって高まり、令和版『ダイ大』フィーバーが巻き起こっています。

 さて、そうなってくると、もうひとつの名作を思い出す人も多いのではないでしょうか。そうです。同時期(1991年~1997年)に「月刊少年ガンガン」で連載されていた超傑作『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』(原作・設定:川又千秋、脚本:小柳順治、作画:藤原カムイ)です。

『ドラクエ』の世界を下地にした作品は他にもありましたが、『ダイの大冒険』とともに人気を博していたのが『ロトの紋章』です。『ダイ大』は少年向けで『ロト紋』は少し大人向け、そんなざっくりとしたイメージで読まれることも多く、派閥意識は多少なりともあったようですが、どちらも大好きだったという方も多いはず。

 ということで今こそ初代『ロトの紋章』の何がどう革新的だったのか。そしてなぜ子供たちはあんなにも夢中になって読んでいたのか。文字数の許す限り解説させて下さい。

●あらすじを語るとかえってミスリードになるかも…そんな「あらすじ」

『ロトの紋章』の舞台となるのは大魔王ゾーマがかつての勇者ロトによって倒された100年後の世界。ロトの血を引く勇者アルスが新たな魔王「異魔神」を倒すべく3人の「ケンオウ」とともに死闘を繰り広げる大河ドラマ、であることは間違いないのですが、実のところこの「あらすじ」自体が伏線となっているような巧妙なストーリーが待ち受けているのですが……割愛させてください。まず革新性にポイントを絞りましょう。

●現実の1年と作中の1年は同じ! ドラクエ世界に「リアルタイム」を導入

 マンガの時間の流れは物語次第です。そんななか『ロトの紋章』はまさかのリアルタイム制を導入します。1年ごとにキャラたちも歳を重ねていくのです。最初は幼かったアルスや剣王キラ、拳王ヤオ、賢王ポロンも次第に少年から青年へと成長していくのです。私たちと同じく生きた肉体を持った勇者たち。この設定こそ『ロトの紋章』を支えるリアリティの骨格をなすものであり、少し大人向きと言われたゆえんかもしれません。(そして、最大の魅力でもあるのです)。

●「ケンオウ」という最高にぶち上がる設定の強さ

 今ほどさらりと書きましたが、勇者アルスの仲間は幼なじみの剣王キラ、そして武闘家少女の拳王ヤオ、元は遊び人だった賢王ポロン。読みはどれも「ケンオウ」。物語の冒頭はまずこの3人の「ケンオウ」を探すところから始まるのですが……「剣」「拳」「賢」が完全に物語にフィット。誰にも動かせない強固な設定を発明してしまったのです。そして彼らがまた歳を重ねていくなかで思いもよらぬ人間関係を生み出すのですが……このあたりの描き方がなんともまたリアルでつらいのです。でも読み進めてしまう! なぜならストーリーも面白いから!

●改めてお伝えしたい、藤原カムイ先生の作画能力の異常さ

『ドラクエ』世界をリアルに描くことはそもそも矛盾した行為です。これを可能にしてしまったのが藤原カムイ先生の尋常ならざる描写力に他なりません。藤原先生は細い線で緻密かつ繊細なタッチが特徴。「解像度」がとんでもない漫画家なのです。だからこそスライムがいかにして人を殺すのかなど、ゲームでは省略されていた部分も容赦なく描いてしまいます。

それは当然、魔物が攻撃を受けた際もしかり。獣王グノン戦における魔物の死屍累々たる地獄絵図は今なお伝説となっています。もちろんそこには「死」を直視する真摯な姿勢が貫かれています。バキがいかに肉を裂くか、ヒャドがいかに凍傷を負わせるか。失血しすぎるとどうなるか。ゲームで回避された描写を全て描き切ってしまったのではないでしょうか。(個人的には小さな妖精ティーエが口を開けたとき、奥歯の溝まで描かれているのを見たとき、めまいに似た感動を覚えました)。 

『ロトの紋章』は無駄なくテンポよく進みます。舞台は『ドラクエIII』の世界が中心ですが、知らない方でも補助線がはっきりと引かれているので、一度没入してしまえば読み進めてしまうこと必至。そして読み進めていくと……冒頭のあらすじがガラリと変わってしまうのです。魔王「異魔神」とは……なんだったのか? 気になる方は、ぜひ。

(片野)

【画像】他にもまだあるドラクエマンガ(5枚)

画像ギャラリー