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『ドラクエ』「勇者ってズルい!」 竜王の気持ちになって考えてみた

普段はプレイヤーの視点なので、敵のずるさが目につくもの。ですが、敵側から見れば、意外と「勇者のずるさ」も目立ちます。いつもと真逆の視点で眺めたら、どんなずるさが潜んでいるのか。初代『ドラクエ』を例に考えてみました。

敵もずるいけど、実は勇者の方がもっとずるかった!?

最初に戦うであろう敵は「スライム」。勇者を倒すどころか、むしろレベルアップの手助けに
最初に戦うであろう敵は「スライム」。勇者を倒すどころか、むしろレベルアップの手助けに

 RPGを遊んでいると、敵の有利さが目につく場合があります。例えば、主人公たちが魔法を使うたびにMPを消費するのに、敵は何度も魔法を唱え、MP切れの気配すら見せないようなゲームも存在します。

 また、味方パーティ人数の2倍以上もの数の敵に囲まれると、その数の暴力に「ずるい!」と言いたくなる時も。こっちの戦力は限られているのに、向こうの頭数は無尽蔵。こうした、敵側の有利な点にぶつぶつ文句を言いながら、過酷な戦いを乗り越えてきた勇者も多いことでしょう。

 ですが、「隣の芝生は青く見える」とはよく言ったもの。敵側の視点で考えると、勇者も少なからず「ずるい」部分があるのかもしれません。

 そうした部分は、ファミコン初のコマンドRPGであり、国民的な人気シリーズの原点『ドラゴンクエスト』にも含まれています。当時意識しなかったどんな要素に、「勇者のずるさ」があったのか。初代『ドラクエ』のラスボス・竜王になった気分で、勇者のずるいと思いたくなる部分をあれこれと推察してみました。

●魔物の配置が、勇者に有利すぎる!

 RPGというゲームとして考えれば至極当然、むしろ配慮がないとクソゲーまっしぐらですが、竜王の立場で考えると、魔物たちの配置に憤りを覚えます。特に、勇者が旅立つ「ラダトーム城」の周辺にいる魔物がスライムって……弱すぎるでしょ!

 旅立ち直後の勇者は、たったのレベル1。装備は貧弱を通り越し、何も持っていません。ゲーム開始直後の勇者は作品全体を通して最も弱く、打倒するには絶好のタイミング。最強格のダースドラゴンどころか、中盤に出てくる魔物の1体を城の周りに置くだけでも、勇者の旅路を決定的に阻めるはず。

 ですがこの辺りにいるのは、スライムにスライムベス、ドラキーといった、駆け出し勇者でも渡り合える魔物ばかり。倒すどころか、強くなるための踏み台として利用される始末です。

 もちろん、最序盤に勝てない敵ばかり配置したら、間違いなくクソゲー一直線。ゲームなので当然の難易度調整と言われればそれまでですが、竜王からすれば「最初の苛立ちポイント」は間違いなくここでしょう。

●騎士道精神旺盛な魔物たち

 勇者と魔物の関係で言えば、その戦い方にも納得がいきません。竜王の軍勢は、騎士系、ゴーレム系、キメラ系、さそり系などなど、その強さから特徴まで多種多彩。その数も膨大で、いくら倒し続けても文字通りキリがありません。

 無数の軍勢を相手に孤軍奮闘する勇者。その構図だけ見ると、明らかに竜王勢が圧倒的に優勢です。しかし、初代『ドラクエ』のバトルは、常に1対1。そのエリアにどれだけの魔物がいたとしても、勇者と戦う時はタイマン勝負。魔物なのに、騎士道精神に則ったような振る舞いです。

 戦いに置いて重要なのは、数的有利を保つこと。個々の質もむろん大事ですが、少数精鋭では膨大な数には抗えないのが現実です。それはおそらく、『ドラクエ』の世界にも通用するはず。例えば、ダースドラゴンが群れで襲い掛かれば、さすがの勇者も太刀打ちできないでしょう。

 勇者がひとりなのは、共に戦う者がいないから。それはつまり、人間側の都合です。その事情を、魔物側が汲むべき理由はないはずなのに、1対1に付き合う律儀な魔物たち。自分が竜王だったら、「魔物なのに、真面目か!」と部下を𠮟りつけたい気持ちでいっぱいです。

 とはいえ、竜王と勇者の戦いも同様に1対1。「自分の力だけで倒してこそ、真の強さ!」といったプライドがあるのだとすれば、その誇りに準じて負けるのも仕方がないのかもしれません。

【画像】勇者ずるい! 「魔王に同情」したくなる決定的瞬間を見る(5枚)

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