『聖闘士星矢』唯一の修復家「牡羊座のムウ」がいない聖域で聖衣はどう修復していた?
牡羊座の黄金聖闘士ムウは、「聖衣」を修理できる唯一の人物で、『聖闘士星矢』でも非常に重要なキャラクターです。しかしムウは教皇に疑念を抱き、招聘に応じません。聖闘士たちはどうやって聖衣を修復していたのでしょうか。
ある程度までは自動修復するみたいだけど…?

車田正美先生によるマンガ『聖闘士星矢』は、1986年に集英社「週刊少年ジャンプ」にて連載が開始され、2022年までにコミックス累計発行部数が5000万部を超える大ヒットを記録しています。ギリシャ神話を題材とした壮大な世界観や、星座をモチーフとした鎧「聖衣(クロス)」、人間の内に眠る小宇宙(コスモ)を爆発させて奇蹟を起こす戦闘描写などで、世界的に人気を博してきました。
聖闘士は、下から順に「青銅」「白銀」「黄金」の3クラスに分けられ、それぞれに「聖衣」があります。格上の白銀聖闘士3人を相手に、手も足も出なかった青銅聖闘士の星矢が、射手座の黄金聖衣をまとった途端、瞬時にその3人を打ち倒す、といった事例が見られるように、聖衣は戦闘を大きく左右しうるものです。
スピンオフ作品『聖闘士星矢 エピソードG』を公式とするなら、十二宮編の前に、聖闘士たちは様々な社会を脅かす敵と戦っています。当然、聖衣も損傷するでしょうが、それを修理できるのは黄金聖闘士のひとり、牡羊座(アリエス)のムウだけです。
ところがムウはこの時期、教皇に疑念があるとしてジャミールの山奥に隠遁していました。これでは聖闘士たちは、本来の任務である地上の守護が果たせません。しかし聖闘士たちは、星矢たちと戦う敵側も含めて、聖衣の損傷を恐れてはいないようです。なぜでしょうか。
ヒントは十二宮編にあると思います。ムウは敵対しているはずの聖域に現れて、白羊宮で星矢たちの聖衣を修復しています。沙織と行動を共にしていたわけでもないのは、ムウ登場に驚いていた星矢たちの態度で明らかなので、白羊宮に滞在して待っていたのでしょう。
でも、黄金聖闘士を初めとする聖域の人々は、訪れたムウを反逆者として討伐しようとはしませんでした。これは、聖衣を修理できる技術者がムウしかいないためでしょう。

ムウ自身も正義の心を持つ黄金聖闘士ですから、聖域の指示には非協力的でも、聖闘士が大地の平和を脅かす敵に対して、戦うこと自体は妨げないでしょうし、可能な範囲で協力したに違いありません。
実際、ケフェウス星座のダイダロスは、アンドロメダ瞬に白銀聖衣を破壊されましたが、回想シーンで魚座のアフロディーテと戦った時には白銀聖衣を装着しています。恐らく、ダイダロスはムウのところを訪れ、聖衣の修復を依頼したのでしょう。
このように「聖域には行かないが、自身のいるジャミールを訪れる聖闘士の聖衣は修復する」といったかたちで、一定の協力はしていたのでしょうし、だからこそ「反逆者として討伐」はなされず、敵対的中立が黙認されていたのだと考えられます(誰も聖衣が直せなくなったら、偽教皇のサガも困るでしょうし)。
また、聖衣はある程度、自然修復能力も備えており、ポセイドン編で粉々に砕かれた青銅聖衣も、修復抜きである程度、原型に戻っていました。こうしたことから、聖衣が壊れた聖闘士はしばらく任務から外すなどの処置も取られていたのだと思われます。
ただ、修理できるのがひとりだけって、不便ですよね……星矢たち4人の青銅聖衣を1時間で治せるくらい腕がいいとはいえ。弟子の貴鬼も、『聖闘士星矢Ω』で牡羊座の黄金聖闘士になっていたくらいなので、ある程度は直せるのかもしれませんけれど。
(安藤昌季)