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『北斗の拳』「天帝編」のファルコとアインを通して我々は何を見せられたのか?

圧倒的な迫力で描かれたラオウとの戦いも決着を迎えた翌週、突然始まった「天帝編」では、いったい何が描かれたのでしょうか。メインキャラクターのファルコとアインを通し振り返ってみます。

武論尊先生も「覚えてない」という「天帝編」

天帝編の主役ともいえるアイン。第140話「驚異のアイン!の巻」より
天帝編の主役ともいえるアイン。第140話「驚異のアイン!の巻」より

 マンガ『北斗の拳』第136話「さらば強敵よ!の巻」において、最強の強敵(とも)である「拳王」こと「ラオウ」が、「ケンシロウ」との激闘を繰り広げた末に最期を迎えた場面は、多くの読者が最終回のような充実感と満足感を味わったことでしょう。しかし、物語は続きました。原作者の武論尊先生も「覚えてない」という「天帝編」で、我々は何を見せられたのでしょうか。

「天帝編」は、端的にいえば「アインとファルコの物語」でした。北斗神拳の伝承者であるケンシロウが成長する物語は、すでにラオウを倒した時点で終わっています。もはや最強の男になったケンシロウの物語を続けていくにはどうすればいいのか。そこで活躍したのが「アイン」と「ファルコ」だったのです。

 それまでケンシロウは、多くの強敵たちと激しく戦って「強さ」を競ってきました。強敵たちはいずれも印象的な死にざまを見せています。ケンシロウは彼らの死を背負って生き続けることで最強の存在になったといえるでしょう。そこに現れたのがアイン、そしてファルコです。彼らは、これまでの強敵たちとは異なる役割を与えられていました。

元斗皇拳伝承者のファルコ。第155話「地獄での再会!の巻」より
元斗皇拳伝承者のファルコ。第155話「地獄での再会!の巻」より

●いつも迷っている男・ファルコ

 ファルコは「天帝」に仕える将軍であり、「元斗皇拳」の伝承者です。北斗神拳も元斗皇拳も天帝を守護する拳法であり、元斗皇拳は北斗神拳を凌ぐともいわれていました。つまり、ファルコの格はケンシロウやラオウと互角、もしくは上となります。それはたとえばファルコがかつてラオウと遭遇した際、村を守るため片足を差し出したファルコに対し、ラオウは何もせず立ち去ったというエピソードからもうかがえるものです。

 しかし、ファルコは強さを誇るだけの男ではありませんでした。天帝の兵士たちと戦うケンシロウは、ファルコの部下たちが純粋な目をしているのに気がつきます。彼らはファルコを慕い、絶大な信頼を寄せていました。「おれたちはファルコ様のためならいつでも死ねる!!」の言葉どおり、兵士たちは身を挺して「ハーン兄弟」の決死の自爆からファルコを守ったほどです。部下からの信頼の厚さは『北斗の拳』随一といっていいでしょう。また、盟友である「ショウキ」、自分のために尽くしてくれる「ミュウ」にも優しさを見せています。

 ファルコは非情な決断のできない男でもありました。かつてラオウに「ジャコウ」を殺すよう言われていましたが、情によって殺すことができませんでした。同じように、天帝の双子の姉妹だった「リン」を殺すことができずに逃がしています。その結果、ジャコウは悪徳の限りを尽くし、リンは北斗の側について天帝側と対立を深めることになりました。ファルコの甘さが混乱と混沌を招いたのです。

 優しさがあって、人を思う気持ちがあって、いつも迷っている男、それがファルコでした。ケンシロウはファルコと戦ったとき、ラオウと戦ったときのような極限の技も出していなければ、怒りも燃やしていません。それどころか、ファルコと同じように自分の片足を封じて戦っていました。つまり、ケンシロウにとってファルコは倒さなければいけなかった相手ではありますが、強さを競う相手ではなかったということです。

 ファルコは拳法家としては強いはずなのに、人間らしい弱さを持った男だったと言えるでしょう。しかし、そんな男が、使命のために最強の男と戦おうとする。そこに「天帝編」の、ひとつのドラマがありました。

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