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『北斗の拳』の「ひでぶっ!」は誤植が生んだラッキーだったのか? それとも狙い通り?

「ひでぶっ!!」「たわば!」「あべし!」「あわびゅ」「うわらば」「つらつら つらら らあ!」「ぱっぴっぷぺっぽおっ」……あなたは『北斗の拳』のどの名言が好きですか?

叫び声の革命

「ひでぶっ!!」といえばこの人、ハート様。画像は「DIGACTION 『北斗の拳』シン&ハート セット」(ディーアイジー)
「ひでぶっ!!」といえばこの人、ハート様。画像は「DIGACTION 『北斗の拳』シン&ハート セット」(ディーアイジー)

 マンガ『北斗の拳』の名ゼリフと聞いて、「ひでぶっ!!」を挙げる人は多いでしょう。これが飛び出したのは、「週刊少年ジャンプ」1983年47号、第7話「狂乱の屠殺人の巻」(※改訂「狂乱の殺人者の巻」)のことでした。

 でっぷりと太った悪役キャラ「ハート」が、「ケンシロウ」の「北斗柔破斬」をくらって身体が破裂したとき最後に発した言葉、それが「ひでぶっ!!」です。

 これは革命でしょう。マンガやTV、映画のあらゆる作品で、言葉を持つ生き物の死に際の叫び声といえば「ギャアー!」など、あまり代わり映えしないものでした。

 それを『北斗の拳』は、死に方に演出を加え、わざわざ吹き出しで「ひでぶっ!!」とセリフにしたのです。しかも、叫び声の想像範囲をぶち破る辞書にはない言葉で、悪者の死に際すらコミカルに見せたのが斬新でした。

「北斗神拳」が身体の内部から破壊させるという特性もあるでしょうが、人は突然死ぬとき、本当はこのような言葉にならない言葉を発するのではないか、というリアルを見せられた気にもなります。

 とにかく、これが読者に大ウケして、その後の「たわば!」「あべし!」などへ、続いていくわけです。

●誤植説が浮上したのはなぜ?

 そんななかで12年ほど前、「『ひでぶっ』は意図的に狙ったのか、誤植によるラッキーだったのか?」、という疑問が話題になったことがありました。それは、関係者から「誤植」の発言が出たからです。

 調べてみると、ことの発端は2012年10月に鳥取市で行われたトークショーにありました。『北斗の拳』原作者の武論尊先生が、こんなエピソードを話したのです。

「『ひでぶっ』は、下書きで「ひでえ」と書いてあるのをアシスタントが誤植して出したもの」。

 このトークシーンがTV番組でも紹介されたため、「誤植説」が全国的に広まりました。

 これに対し、特にコアなファンは戸惑いました。まず、騒動以前に出ている『北斗の拳』文庫本第15巻の「あとがき」で、作画の原哲夫先生は……

「『ひで=痛て』で、体の内部からの破裂音ですので、このセリフを言ってる途中で体がくだけてるので、『痛えよ~っ』と言い終わる前に、『ぶ』とくるわけです。(中略)ですから、誤植でも偶然の産物でもないんです」。

 と、「ひでぶっ」ができ上がるまでをしっかり解説しています。

 さらに、1999年発行『北斗の拳2000―究極解説書part 2』の、武論尊先生、原哲夫先生、当時の担当編集者の堀江信彦さんによる対談にも、こんな会話がありました。

(一部抜粋、敬称略)

武論尊:「ひでぶっ」なんてのはただの誤植だからね。

原:先生、それは違うんですよ。あれは自分でちゃんと書いてるんです(笑)

堀江:原先生の字が汚くて、何書いてるのかわからなくてね。最初は僕も先生が間違えてるんじゃないかと思ってた(笑)

原:確か『鉄のドンキホーテ(※『北斗の拳』前の作品)』の頃から書いてたんだけど、直されてたんですよ。雰囲気を出そうと思って一生懸命変なことを書いてるんだけど直されちゃって(笑)

 ……ということで、原先生は意図的に狙って「ひでぶっ」と書いたことを明言し、堀江さんも流れを理解しており、武論尊先生も直接説明を受けています。

 つまり、原先生が話した解説を知らない人は「誤植説」を素直に信じ、知っているファンは「どっちが本当?」と戸惑いの声が浮上して騒動になったわけです。

 この騒動のおおよその見解は、このように落ち着きました。

「たぶん、武論尊先生は、対談での内容を忘れていて、以前から思いこんでいた誤植の話をしてしまったのだろう」。

 トークショーの際は本の出版から10年以上経過していましたから、忘れるのも無理ないと思います。

 ということで真相としては、「ひでぶっ!!」は原先生が狙って創作したセリフ、で間違いないでしょう。「誤植説」を信じている人がいたら、教えてあげて下さい。

(石原久稔)

【画像】え…っ? 「普通ならこれで死にそう」 コチラがハート様が「ひでぶっ」となる前、ケンシロウにメチャクチャ「腹を蹴られてる」場面です

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