『ドラクエ2』最初からサマルトリア王子が最強だったら? 再現可能だが準備が苦行すぎ!
1987年にファミコンで発売された後、さまざまなハードに移植された名作RPG『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が、発売から37周年を迎えました。この機会に同作で「弱いことで有名」だったサマルトリアの王子を主役にした、こだわりプレイをしてみました。
不遇なサマルトリアの王子を活躍させたい!

1987年1月26日にファミコンで発売されたRPG『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』は、「勇者ロトの子孫が統治する3つの国の王族が協力し、世界を破滅させようとする大神官ハーゴンを討伐する旅に出る」というストーリーでした。
ドラクエシリーズ、そしてRPGというゲームジャンルの人気そのものを押し上げた名作の「誕生日」を記念して、何かと弱いことで有名だった「サマルトリアの王子」を主役とした、なりきりプレイ記事を書いていきます。
サマルトリアの王子は、最初のファミコン版で普通にプレイすると「強い武器は装備できないので、通常攻撃は弱く、攻撃魔法も全然覚えず、回復魔法も微妙」なので、「いらない子」扱いまでされてしまうという、気の毒なキャラクターです。
他のナンバリングタイトルに比べて『ドラクエ2』のゲームバランスが厳しいこともあり、強い攻撃手段を持たないサマルトリアの王子の弱さがより際立つ仕様でした。しかし、実は彼は「大器晩成」キャラクターでもあります。今回は、「サマルトリアの王子だけ、いきなり最強だった件について」というコンセプトで、名誉挽回のプレイを進めていきます。
『ドラクエ2』は、主人公であるローレシアの王子の名前しだいで、サマルトリアの王子とムーンブルクの王女の名前が自動的に決まります。裏技で変更もできますが、今回はサマルトリアの王子が主役なので、変更せずともカッコイイ名前にしたいところです。
試行錯誤した結果、ローレシアの名前を「あすあ」にすれば、サマルトリアが「カイン」、ムーンブルクが「マリア」となることが分かりました。いい感じです。
というわけで、冒険開始。コンセプトが「サマルトリアの王子だけ、いきなり最強だった件について」なので、ローレシアの王子アスアをレベル1スタートにすべく、逃げ続けてサマルトリアの王子カインを仲間にします。そして、毒の沼地でアスアをHP0にしました。これでカインによる1人旅の準備ができました。あとはレベルを上げるだけです。
『ドラクエ2』はRPGなので、プレイヤーの数だけ物語があります。なぜカインがひとり旅をするのか、筆者の脳内ストーリーを書いていきます。
* * *
僕はカイン。サマルトリアの王子。この国の南にあるムーンブルクが大神官ハーゴンの軍勢に蹂躙(じゅうりん)されてから、父王は「勇者ロトの子孫である我が王家は、ローレシア、ムーンブルクと力を合わせて、世界の危機に立ち上がらねばならぬ!」と言い出した。
僕は覚悟できているけれど、妹のリルムはダメだ。あんな可愛くて、ふわふわしていて、甘えん坊な生き物が、魔物と戦えるわけがない。父王に「ロトの子孫全員がハーゴン討伐に出て、もし討ち取られたら、世界の希望は絶えてしまいます! 僕だけでいいです」と力説して、僕だけが冒険に出る許可を取り付けた。
リルムが「わたしもローレシアの王子アスア様を助けて、冒険に出たい!」というから「ダメだよ。お前は」と返したら「お兄ちゃんのいじわるうっ!」と頬を膨らませてきた。
いじわると言われようが、こんな可愛い妹を冒険になど出すものか! ましてや、アスアとの旅なんて論外だ。あいつはロトの子孫なのに、魔法を軽んじて剣ばかり振っている粗忽(そこつ)者だぞ。あいつの何がいいんだ。まったく。
そんなことを考えていると、リルムが寝間着姿で部屋にやってきた。何度「はしたない」と窘めても、全然改まらない。もう13歳なのに。何と注意したものか。
「お兄ちゃん、あたし、悪い夢を見たの」
いつになく、真剣な口調だった。話を聞くと、僕がアスアや、ムーンブルクの王女マリア姫と旅をしている夢らしい。
「リルムがそこにいないなら、いい夢じゃないか」
「ふざけないで! お兄ちゃんは、剣も魔法も弱くて、みんなの足を引っ張っていて……あげくの果てにハーゴンの呪いを受けて、宿屋で倒れてしまったの!」
「前言撤回。ひどい悪夢じゃないか……」
「ハーゴンが呪いをお兄ちゃんに向けているのは間違いないわ。感じるもの」
リルムもロトの子孫だ。秘められた魔法力は僕よりも高い。妹が言うなら、そうなのだろう。
「だから、あたし。お兄ちゃんの呪いを、祓(はら)ってあげるね」
有無を言わさず、リルムは僕の額に手を当て、ロトの聖なる力を解き放つ。背中に羽が生えたように、体が軽くなった。
そう言われてから数日後、僕はハーゴン討伐の冒険に出た。色々あって、ローレシアの王子アスアと合流できたのだけど、宿屋で祝杯を挙げていたら、アスアが倒れてしまった。
僕はアスアを棺に入れて、サマルトリアの城に連れていった。
リルムが仮死状態となったアスアを見るなり、泣きながら言う。
「呪いを受けているわ……。ハーゴンはアスア様にも呪いをかけていたのね……。あたしがお兄ちゃんの呪いを吹き飛ばしたから、アスア様がふたり分の呪いを受けてしまったのよ」
「僕の分まで呪いを?」
「あたしでもふたり分の呪いは跳ね返せないわ。でも……ひとつだけ方法があるかも」
「どうすればいい」
声に力がこもった。アスアは粗忽(そこつ)者だが、いい奴だ。このままにはしておけない。妹の泣き顔も、いつもの笑顔に変えたかった。そのためなら、何でもしたい。
「……お兄ちゃんが、強くなればいいの。ハーゴンの呪いを受けないほどに。そうすれば、ふたりの呪いがお兄ちゃんに戻っても、ふたりとも助かるわ」
「わかった。でさ、リルム」
「なに」
「今回のことは、ハーゴンが悪い。呪いを払ったお前には、感謝しかないよ。僕が、弱かったから、呪いを受けただけ。絶対に、強くなるから、気にやまないで」
僕はそういって、落ち込む妹の頭を撫でた。
* * *
というわけで、カインを最高レベルの「45」まで上げることにします。
スライムやおおなめくじを倒してレベルを上げ、武器を「くさりがま」に買い替えてさらにレベルを上げます。泣くほど弱い……。『ドラクエ2』では仲間が死んでいても、もらえる経験値が増えることはないので、気の遠くなるほど戦闘を重ねて、ようやくレベル18に。
ここで初めて、全体攻撃呪文「ベギラマ」を覚えます。普通にプレイすると、25ダメージ前後の威力しかないので「他の仲間に止めを刺させるために削る」という使い方をする攻撃呪文なのですが、ムーンペタ周辺の敵まではほぼ一撃で全滅させられるので、レベル上げが進みます(ベギラマを覚えないと危険で、ムーンペタ周辺では戦えません)。