スクエニとGoogleがタッグ 生成AIによる「バディ」はゲーム体験を一変させうるか?
『ドラクエ10』に生成AI搭載とのニュースを受け、誤情報を含め大いに話題となりました。実際にどういうことができて、ゲーム体験はどのように変わるのでしょうか。
孤独な冒険は終わる? 『ドラクエ12』にも登場?

スクウェア・エニックスとGoogle Cloudは、『ドラゴンクエスト X オンライン』(以下『ドラクエ10』)に生成AIを活用した対話型バディ「スラミィ」を実装すると発表しました。
このスラミィは、プレイヤーの友だち兼サポート役です。チャットやボイスで話しかけると即座に応答し、強敵の撃破やアイテム取得といった状況を認識して、自然に話しかけてくるのが特徴です。2026年3月30日(月)まで、ベータテスト参加者を募集しています。
ドラクエの生みの親である堀井氏は「村人などのNPCにAIを使うのは違う」と語っているとされており、本機能はあくまで「主人公に寄り添う友だち」としてのAIバディに位置づけられています。
その「NPCにAIを使った」実例として知られるのが、『The Elder Scrolls V: Skyrim』の会話AI生成Mod(改造プログラム)です。膝に矢を受けてしまった話を延々と聞けるような自由度の高さは魅力ですが、『ドラクエ10』のような大規模オンラインゲームでは、処理負荷の面から現実的ではないと考えられます。
では、このスラミィAIによって、どのような青写真が描かれているのでしょうか。
短期的には、『ドラクエ10』において新規プレイヤーが迷子になりやすい、あるいは孤独になりがちな状況を解消する狙いが明確に示されています。約14年にわたる運営によって世界が巨大化しているため、初心者などに寄り添うガイドの必要性が高まっているのです。
さらに「攻略サイトを見なくても済む、ちょうどよい答えをくれる友だち」とも説明されており、プレイ体験をゲーム内で完結させる意図もうかがえます。
なぜ「Gemini Live」? スラミィのその先は…?
スクウェア・エニックスがGoogleの「Gemini Live」を採用した理由は、低遅延で素早く対話できる点にあります。加えてマルチモーダル、つまり画面内で何が起きているかを認識しながら会話できること、プレイヤーとのやり取りを記憶できること、さらに誤情報や不適切な発言を防ぐガードレールが備わっている点も大きな要素です。目と耳を持ちながら、ドラクエ世界のルールを守って会話できるAIというわけです。
とくに重要なのが、この「ガードレール」でしょう。かつてスクウェア・エニックスは『ポートピア連続殺人事件』のAI実験版を無料配信しましたが(注:2026年3月末現在も無料配信中)、非倫理的な発言の可能性を考慮し雑談機能を削除した結果、事件関連のキーワード以外には反応しない仕様となり、会話として成立しないと散々な評判でした。
また、数百万ユーザー規模の同時接続にも対応できるスケーラビリティや信頼性も挙げられます。Google Cloudは『ドラゴンクエストウォーク』での実績もあり、「落ちない」インフラとしての堅牢さには定評があります。
この「迷子を減らすAI体験」は、他のタイトルにも横展開しやすいモデルです。たとえば次の『ドラゴンクエストXII』では、ゲーム序盤からAIナビが登場し、必須アイテムが足りなければヒントを出したり、ボスを効率よく倒せば褒めてくれたりといった活用も考えられます。応用の幅は広いでしょう。
もっとも、「ドラクエ」シリーズは「強固な物語」という特徴があり、AIによるストーリー生成とは馴染まないでしょう。また、堀井氏もドラクエを「1冊の本」と捉え、従来のNPCのメッセージであれば読み終えれば区切りがつく一方で、AIを導入すると「この人といつまで喋ればいいのだろう」とキリがなくなり、遊ぶ側の負担が大きすぎる、と、ユーザー目線から否定的だったと伝えられています。
『ドラゴンクエスト X オンライン』:
(C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX
(多根清史)