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なぜ『バイオハザード』は30年続いたのか? 1.8億本ヒットの裏に破壊と再生の開発史

ゲーム「バイオハザード」シリーズが30周年を迎えました。「サバイバルホラー」というゲームジャンルを広く浸透させた同シリーズは、しかし、完成間近でも全ボツを辞さないスクラップ&ビルドの30年でもあります。

「完成間近で全ボツ」も辞さず バイオが進化し続けた理由

シリーズ30周年の2026年2月27日に発売された『バイオハザード レクイエム』。ナンバリングタイトルとしては『9』にあたり、PVでは「requiem」が「re9uiem」になる演出が見られる (C)CAPCOM
シリーズ30周年の2026年2月27日に発売された『バイオハザード レクイエム』。ナンバリングタイトルとしては『9』にあたり、PVでは「requiem」が「re9uiem」になる演出が見られる (C)CAPCOM

 カプコンの人気ゲーム「バイオハザード」シリーズは、2026年3月で第1作発売から30周年を迎え、シリーズ累計販売本数は1億8000万本を突破しています。「サバイバルホラー」というジャンルを確立しただけでなく、これほど長期にわたり継続的に新作を投入し続けているのは驚きです。さらに先の2月末には、最新作『バイオハザード レクイエム』も発売されました。

 なぜ、これほどの長命を誇りながら、いまなお確かな人気を保ち続けているのでしょうか。その大きな理由は「完成間近での全面的な作り直し」さえも辞さない姿勢にあると考えられます。

 そもそも初代『バイオハザード』は、ディレクターを務めた三上真司氏がファミコン用ホラーゲーム『スウィートホーム』から、「ドアが開くまでの待ち時間」「閉鎖空間でのアイテム制限」といった恐怖演出を受け継ぎつつ、大きな転換を図ったものです。敵を幽霊(倒せない存在)からゾンビ(撃って倒せる敵)や生物兵器へと変更し、「恐怖」に「倒す爽快感」を組み合わせたのです。

 さらに初代の成功後、続編『2』のプロトタイプとして開発が進んでいた通称「バイオ1.5」は、完成が近づきながらも総ボツとなりました。ステージ構成は製品版と大きく変わらなかったものの、警察署は近代的なオフィスビルであり、登場キャラクターも初代から総入れ替えだったといわれています。

 当時のディレクターである神谷英樹氏は、「『バイオ2』としては出したくなかった」と振り返っています。転機となったのは、シナリオライターの故・杉村升氏の提案でした。警察署を「美術館を改装した建物」に設定すれば自由度が広がる、という発想です。さらに、女スパイの「エイダ」や前作主人公「クリス」の妹「クレア」を登場させることでシリーズのつながりを強化し、遊び心に満ちた『バイオ2』へと再構築されたのです。

 続くナンバリングタイトル『3』も、当初は「バイオ1.9」と呼ばれるスピンオフ的な企画でした。『2』のアセットを流用したカジュアル寄りのゾンビアクションでしたが、途中でPS2が発表されたことにより、急きょ会社判断で「3」へと格上げされます。初代PSのライフサイクル終盤において、シリーズの人気を維持する必要があったためです。

 さらに、神谷氏のもとでPS2向けに開発が進められていた『バイオ4』の初期バージョンも、最終的にはボツとなりました。アクション性が高まりすぎた結果、「これはもうバイオではない」と判断されたのです。その企画は後に『デビルメイクライ』として結実し、新たな人気シリーズへと発展します。

 その後、三上氏のもとで再出発した『バイオ4』は、複数の試作を経て完成しました。肩越し視点の「ビハインドビュー」への変更は特に高く評価され、シリーズの方向性を決定づけました。しかし三上氏本人は「感覚的にこのくらいのカメラがいいと思っただけで、特別に新しいとは感じなかった」とサラッと振り返る恐ろしさです。

『5』『6』も商業的に成功を収め、シリーズは安定期に入りました。しかしカプコンは現状に甘んじることなく、「ファンが飽和状態にある」と危機感を抱いたといいます。そして、アクション性よりも「恐怖」に立ち返った『バイオハザード7 レジデント イービル』は1000万本を大きく超えるヒットを記録しました。

『バイオハザード』の歴史は、成功に安住せず、自らを変革し続けてきた30年の歩みでもあります。さらに、「バイオではない」とされたプロジェクトから『デビルメイクライ』という別のヒットシリーズを生み出した柔軟さこそが、カプコンの強さの源泉といえるでしょう。

※記事本文中の作品タイトルに一部誤りがあり修正いたしました。(2026年3月23日16時15分)

(多根清史)

【画像】こちらが「おっぱいのペラペラソース!」で知られるシリーズ作品です

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多根清史

フリーライター。主にゲーム・アニメ・漫画を守備範囲としてきたほか、ここ数年は(個人的なガジェット好きもあり)iPhoneやスマートフォン、インターネットやPCなどハイテク全般の記事も執筆。著書に『宇宙世紀の政治経済学』『教養としてのゲーム史』、共著に『超ファミコン』『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』など。

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