【ネタバレ注意】話題沸騰の劇場版『ガンダムSEED』 ファンが熱狂した単純明快な理由
アスランの登場に劇場では声にならないリアクションが連発

今回のキラ・ヤマトは、久々に「悩める主人公」でした。前作『DESTINY』での悟ったような感じではなく、1作目の時のような危うい雰囲気が目立っていたと思います。もっとも、これは「SEED」シリーズのお約束のようなもので、物語の中心にいるキャラクターの心の乱れが、作品を動かしていくからでしょう。
そう考えると、今回の物語の中心から一歩置いた位置づけだったアスラン・ザラとシン・アスカのふたりの活躍は、そのパターンから外れた結果と言えるかもしれません。そういう意味では「主人公」だったために、中心にいたキラが割を食ったとことになります。
キラは敗北し、自信喪失します。そこから仲間の叱咤激励で立ち直り、気持ちを新たにして敵に立ち向かうという流れは、鉄板の黄金展開と言っても過言ではありません。そして、仲間たちとMSが続々集まり、逆転劇が始まっていくというところが本作最大の見どころのきっかけでした。
前述のアスランもそのひとりです。別チームでの登場が公開前から伝えられていたので、おそらくキラの危機にやって来るだろうと予想していた人は多いことでしょう。ただし、乗ってきたMSに関しては、誰も予測していなかったことと思います。
このアスランが乗ってきたMSが「ズゴック」だったことは、本作の隠し玉のひとつだったのでしょう。機体名がX(旧:Twitter)で2日連続トレンド入りしていました。劇場で筆者が観ていた時も、この場面でリアクションする人も多くいたのを確認しています。その後、観た人と話をしても、アスラン登場の場面には度肝を抜かれたと口々に言っていました。
今回のアスランは敵からの評価も高く、安定感のある活躍を見せています。TV版でも戦闘力がメンタルに左右されることが多かったので、悩みを持たないアスランの強さが際立ったのかもしれません。
前半にいいところがあまりなかったシンでしたが、終盤の活躍はその分を補って余りあるほどのものでした。TV版ではあまり見られなかった「デスティニーガンダム」での八面六臂のバトルは、ついに真の実力を見せるに至ったという感じでしょうか。
それも作品中盤までは「キラから信用されていない」と思い悩んでいたせいでした。最終決戦ではキラから全幅の信頼を寄せられたことで、一気に本来の力が解放されたのかもしれません。この変わりように、「シンはこんなにかわいいやつだったのか」と言う人もいました。
そして、今作ではもうひとりの主人公的な位置にいたラクス・クライン。前述の通り、物語の中心にいる者の定めで悩めるヒロインとなっていました。しかし、相変わらずの芯の強さは不動のもので、どんな相手に対しても自分を曲げないところを貫きます。
パイロットスーツを着て自ら戦場の真っただなかに飛び込むとはTV版の彼女からは想像もできない展開でした。この謎の羽が付いた独特のパイロットスーツはとても印象的で、フィギュア化を望む人が多いとうわさされています。観た人ならば、そう思うのも無理ありません。
このほかにも、イザーク・ジュールとディアッカ・エルスマンが最終決戦で乗ってきた、核動力となったデュエルとバスターもファン感涙の展開だったと思います。『DESTINY』最終回で見たかったという人も多くいました。これだけでなく最終決戦に出てくるMSは見せ場が多く、ファンが目を離せない展開が続いていたと思います。
とにかく、中盤までの暗雲を一気に晴らすかのような最終決戦の盛り上がり。『ガンダムSEED』ファンの多くが大満足だったことでしょう。筆者としては、早くディスク化されて、コマ送りで確認したい名場面がてんこ盛りでした。もちろん見せ場は人それぞれでほかにもあると思います。すでに劇場に足を運んだみなさんの、注目ポイントはどこだったでしょうか?
(加々美利治)